昭和11年(1936)製の乾板用のハンザの引き伸ばし機(ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=125, 1:6.3)についての記事の続き。
「Lucky II-Cの口径の小さなコンデンサーレンズに代えた・・・光が回らず四隅が若干欠けている」について、やはり一考。元の大きなコンデンサーレンズに戻すことにした。
コンデンサー室から反射笠を受ける皿部を取り除くとその下にコンデンサーレンズの筒を収めるための刳り貫きがあることを発見。これが本来のコンデンサーレンズの収容部と合点。つまり、これまでの収め方が間違っていたのである。ついでに紙筒(ダイソーで購入したパーティグッズ)をスペーサーにしてUV光源とコンデンサーレンズの距離を調整した。
(SMDユニットを吊るす紙筒はアルミ箔を内張り)
乾板を仕掛けない状態で印画紙面上のUV光の当たり加減を確認。SMDユニットの点光源が見える位置まで引き伸ばし用レンズに紙を近づけて、その点が紙の中心にくるようにSMDユニットの位置を微調整する。
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早速、ガラス乾板を用いてプリントを行う。乾板は気に入って使っている百年以上前の少女像(拙稿「乾板写真の美」)。左右反転(鏡像)となるよう乾板を置く。印画紙はvif Art B5 (H.P. surface) paper。焼き付けは約二時間。集散光性が改善されたせいか、光が回らず焼き目が甘かった四隅がはっきり顕像するようになった。胸元のレースの模様もはっきり再現されている。そしてジャスミン茶でのトーニングも従来よりも濃く結果が出る(インク色であるブルー・ブラックになる)。
ラスティックな縁の賞状額に収め壁にかけてみた。
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去年の今頃はこんな程度だったので、だいぶ進歩したことだけは確か。好きこそ物の上手なれ。そして何よりも百年以上前の写真乾板と1936年製の引き伸ばし機が共に未だ「実用品」足り得ることは嬉しい(拙稿「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」)。四年前に召された母とほぼ同い年のこの引き伸ばし機はシャキッと背筋を伸ばして百代の過客である。「100年時代」を人に課すのではなく、百年を超え世代をわたって使い続けられるモノの価値観に求めて欲しいものだ。移り気な短寿命のモノやサービスばかりの社会でどうして人間が「100年時代」を生きよというのだろうか?低代謝社会、国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)、ナマケモノの生き方に学ぶ、ベクトルをアベノミクスとは逆にした発想の転換こそ世界一の超高齢社会たる我が国には必要と思う(拙稿「立ち位置を知ること」)。日本の立ち位置を聞くべきはノーベル経済学受賞者などではなく、ブータンのワンチュク国王であろう。象徴天皇が最初に会う相手はこの賢王であって欲しかった。
(おわり)
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