立憲民主など野党は17日、北方領土を戦争で取り返すことの是非に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員に対する辞職勧告決議案を衆院に提出した。(共同通信・2019/5/17報)
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「領土」とは何か?について拠って立つところの違いは大きい。「領土」を憲法で論じることはこのように侵略・支配を正当化するが(ロシアのクリミア侵攻にみられるように)、武力に拠る危険な考えでもある。もし、我が国もロシアと同じく憲法を改正し、9条の平和主義を捨て「領土」条項を入れて憲法で論じることになれば、解決は話し合いではなく軍事的紛争に拠ることになるだろう。どちらが戦いに勝つかである。その決め方がいかに不幸な結果になるかは、クリミア危機が示す通りである。(拙稿『「領土」とは何?』)
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丸山議員の発言(特に「戦争しないとどうしようもなくないですか」)は確信犯的である。その確たる信念の元に自民党憲法改正草案の「領土」条項があるのだろう。(第9条の3)

現日本国憲法に「領土」条項は存在しない。「領土」を憲法で論じることはせず、外交が決着した国際法に委ねる問題としているからである。しかし、自民党憲法改正草案には「領土」条項が新設されている。
「領土」を憲法で論じることは、領土権=土地の支配と共に人民を支配し、生存圏・経済的支配、選民支配という戦前の「大東亜共栄圏」思想(大日本主義)と繋がり、五族協和・共存共栄の大義の下、武力による周辺諸国の支配、即ち、軍事覇権(戦争)に至った戦前のレジームに容易に回帰する虞があるから、そうさせない為に日本国憲法に敢えて「領土」条項は存在しないのである。
『奪回防衛実効支配』(高須克弥氏)とは何を指しているのかは言わずとわかることだ。「僕は『戦争』って単語は使ってません。」はこの人だけでなく、「領土」条項を新設しようとしている自民党の言い分でもある。しかし、実質は軍事覇権(戦争)に至った戦前のレジームの焼き直しである。
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他方、ロシアは「領土」を憲法で論じる。領土権=土地の支配と共に人民を支配し、生存圏・経済的支配、選民支配がその憲法上の「領土」として論じられるのであるから、領土権としてそれらの支配は着々と進められてきた。だからと言って、我が国も「領土」を憲法で論じることになれば、軍事力での鍔競合い、その先には戦争しかない。「力のあるほうが勝つ」と装うことの先には核武装しかない。
丸山議員は、このスキームにおいて呉越同舟たる自公維の裏切りに憤っているのかもしれない。
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「線を引いてここからが自分の土地、向こうがあちらの国、その結果、奪い合いをしてどっちが得したとか損したとか、そのために兵をあげてどうするとか、そういうものに血気盛んになられても困るんです」(「坂の上の雲」について・司馬遼太郎)
この呉越同舟、全く困った愚連である。
(おわり)
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