3月28日付東京新聞朝刊記事(見開き)で「IOCライセンス活動は違法」と特報。
街角に溢れかえるオリンピックのマークやロゴを使ったスポンサー企業の広告。それらライセンス活動は商標法違反。使い続けることは犯罪。
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津々浦々走り回るこのタクシー

(「最近よく見るあのタクシーは、何?」NHK News Web引用)
「IOC=国際オリンピック委員会とスポンサー契約を結ぶトヨタも、タクシー会社が希望すれば、大会のエンブレムを無料で車両にラッピングするサービスを行って、オリンピックへの機運を盛り上げようとしています。」とNHKの記事。
オリンピック・シンボル(五輪のマーク)の使用権をトヨタはIOCからTOPパートナー契約で得ている。

(トヨタ プレスリリース「トヨタ自動車、IOC TOPパートナーに決定」から引用)
その使用権をタクシー会社(希望する者)に又貸し(サブライセンス)していることになる。
そもそも、IOCのように、活動の社会性や公益性が重要視される非営利団体が有するマークやロゴにはその活動によって蓄積された社会的評価、権威や国際信義が化体している。したがって、それらを第三者に使わせることは好ましくないという立法趣旨から(商標法第4条1項6号、第4条2項)、その登録商標について商標権者は第三者に使用を許諾することが固く禁じられている(第31条1項但書き。たとえば、オリンピック・シンボル(五輪マーク)は商標権者自身=IOCしか使うことはできず、トヨタに使わせることはできない)。
剰え、希望するタクシー会社があればトヨタがオリンピック・シンボルや大会エンブレム(いずれも登録商標)を車体に貼る行為は、それを以ってIOCの権威や国際信義を又貸ししていることに他ならない。IOCはわが国の商標法を知らないのだろうか?たとえそうだったとしても(過去)、市井の弁理士が一人果敢に論文およびブログ記事を以って問題点を指摘し(「オリンピック知財のライセンス活動の商標法上の位置付け」パテント誌2019 Vol. 72 No. 3、およびブログ記事「特許の無名塾」)、今国会では参院法務委員会で小川敏夫議員(立憲民主党・民友会・希望の会)が違法性を明らかにし(3月20日)、そして東京新聞が今般見開き記事で詳しく伝えるに至っては(3月28日)、もはや知らないでは済まされない。トヨタのようなビッグスポンサーから多額の協賛金さえ得られれば、違法と知りつつもそのライセンス活動をIOCが今後も黙認するのであれば、オリンピックという競技大会の営利と公益性との間の矛盾が露骨に表面化するだろう。
IOCもトヨタも互いに違法行為と認識しているなら刑法上の共謀罪が問われる。それだけ大問題なのである。
「オリンピックへの機運を盛り上げようとしています」などとノホホンとNHKは伝えるが、「不都合な真実」(ライセンス活動の違法性)については伝えない。法を蔑ろにしても盛り上がれば良いというオリンピックとは一体何なのだろうか?その引き換えに法治主義を放棄して良いのだろうか?
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全国紙を抱える大手新聞社の多くは自らオリンピックの協賛企業(スポンサー企業)であり、また数多くのスポンサー企業を広告主として抱えている。ゆえに今般の問題を取り上げようとしない。YahooもGoogleもニュースサイトにこの違法ライセンスに関する記事は今のところ一切ない。テレビもラジオも沈黙している。オリンピックのマーケティング活動を一手に握り、スポンサー集めに奔走する電通の息がかかる先では、須らくそうなのだろう。その中にあって東京新聞だけが堂々と伝える。
「(オリンピック関連の)登録商標を使っているスポンサー企業は、商標権侵害に問われかねない。むろん今後、法改正されても、今の違法性は消えない(法令不遡及の原則)。スポンサーには大手報道機関も名を連ねているが、この「不都合な事実」を報道するだろうか」とデスクメモ。
「不都合な事実」こそ伝えてこそ報道機関の使命。東京新聞を購読しよう。
(おわり)
追記:
東京新聞報に続き、この「不都合な事実」を伝えようとする報道機関はあるのか?我々にとってもこの国の報道の自由度を測る試金石となる。
いずれにせよ「不都合な真実」(ライセンス活動の違法性)は、同新聞の報道により今や世間一般の知るところになった。繰り返すが、違法性を認識しながら尚も違法行為を続けるIOC, JOC, OGCなどオリンピック関係者とスポンサー企業はもはや「知らなかった(過失)」では済まない。「罪を犯す意思(故意)」を以って違法ライセンス活動で行っていることになる。
今国会に商標法(31条)改正法案が提出されており、おそらく法案は成立・公布施行されることだろう。改正法下で、公益団体はその登録商標を第三者に使用許諾することが可能となる(合法化)。
しかし改正法を以って現下のライセンス活動が合法化されることはない(法令不遡及の原則)。改正法を適用しその活動を合法化するには、使用の客体たる登録商標(市松文様のエンブレムやロゴ、マスコット、五輪のシンボルなど多数)を全て一旦、無効審判で遡求消滅させ(ライセンス活動は中止)、改正法下で再度出願・審査・登録の上、スポンサー企業とライセンス契約をし直し・・という複雑な手続きが必要になるだろう。オリンピックは開催不能または開催延期とならざると得ない。
否、2020年のオリンピック開催は至上課題であり、そのためには脱法行為(強引な法解釈によって合法的に行うことを可能とみなす)や超法規措置(高度の公益の観点から実定法上の根拠に欠ける措置を行政権が講ずる)も吝かでないとするなら(おそらくそうなるだろう)、僅か二週間足らずのお祭り騒ぎのために、戦後営々とこの国が築き上げてきた法治国家としての威信や信義を捨ててしまうことである。たかが、商標法ではない。商標法すなわち行政手続に係る法令を破ることは、行政=国家がもはや存立し得ないことを意味する。政治家は本来的に嘘をつく職業だが(だから選挙という国民の審判を必ず受ける)、行政が嘘をつくことはあってはならない。法を捨てれば国家が死ぬ。オリンピックがその死の象徴となろうとしているのである。
このままで良いのか?我々国民一人一人に問われていることである。
拙ブログはしばらく、この記事をトップに据えることにします。この途轍もない法令違反を未だ知らない人がいたらお伝え頂きたく。そして東京新聞の続報にどうか関心を持って欲しい。
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