2019年01月19日

首相のロマンツェ






1992年に遺灰がワルシャワに持ち帰られ、レフ・ヴァウェンサ大統領とジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領が列席する中、ワルシャワ聖ヨハネ聖堂の地下霊廟に埋葬された。ポーランドの初代首相(1919年1月-11月)、ポーランド亡命政府(1939年)の指導者となった、イグナツィ・ヤン・パデレフスキ(Ignacy Jan Paderewski, 1860年11月18日 - 1941年6月29日)が半世紀ぶりに故国に帰った日であった。

偉大な政治家である上、彼はヒューマニストだった。夫婦で社会事業や寄附活動も行ない、貧しい農家の子女のために学校を開き、ナチスに占領された故国の解放のため、ポーランド回復基金を発足させ、財源確保のために何度か演奏活動を行なったのである。



( 映画 "Moonlight Sonata" (1937)で自作のメヌエットを弾くパデレフスキ)

そう、彼は一流の演奏家だった。


(ピアノ:アール・ワイルド)

そして、偉大な作曲家だった。このピアノ協奏曲の第二楽章(ロマンツェ)は実に美しい。この曲の楽譜をみた大作曲家サン=サーンスはこのロマンツェに痛く心を動かされたエピソードまである。

そして、名言を残した。
「一日練習を怠ると自分には分かる。二日怠ると批評家に分かる。三日怠ると聴衆に分かってしまう。」( “If I miss one day’s practice, I notice it. If I miss two days, the critics notice it. If I miss three days, the audience notices it.” )

自分に分かることだけでも練習を怠ることはできない。ひとを欺くことはおろか、自分も欺くことができない。

同じ首相であっても、ひとを欺くことに長け、何のタレントもなくただ血筋だけという人もいる。

(おわり)

posted by ihagee at 20:00| 音楽