2018年12月25日

サイアノタイプ - その61(引き伸ばし機)



今年も残りわずか。
東京都中央卸売市場が築地から豊洲へと移転したものの、新市場については構造計算偽装(設計:日建設計)をめぐる裁判が係争中と聞く(『豊洲市場の「闇」に光差す!東京高裁「抗告許可」決定(前)〜技術専門家が解説』2018 データ・マックス)。

また、閉場された築地に於いても『のれん』に基づく営業権に関して、仲買人たちと都との間で法律上の対立が続いている(築地女将さん会HPより)。

法を曲げてまで移転が優先したのであろうか?食の安全を語る以前の問題であろう。

----

拙稿「五輪」という破壊(続き6)で、閉場直前の築地について報告し(フィルム撮影:Canon AL-1 / Kodak 400 Tmax / Carl Zeiss Jena, Flektogon 4/25)、ネガフィルムを使ってサイアノタイプ・プリントも試みた(拙稿「サイアノタイプ - その58(引き伸ばし機)」)。

Lucky II-C (Fujinar-E75mm F4.5)を用いて、あらためて一枚プリントを行った(vif Art (B5 H.P. surface) )。

Cyanotype print made on an old photographic enlarger directly from a 35mm negative film without using a conventional contact printer and digital processing

(Fujinar-E75mmF4.5で四時間焼き付け・水洗オキシドール漬後、ジャスミン茶でトーニング)

サイアノタイプは感光剤の低感度ゆえに引き伸ばし機の光源(白熱球)では感応しないものとされてきた。しかし、ブラックライトのUV光源であればそれなりに時間をかければ感応可能であると判ったのも今年に入ってから。これは大きな発見だった。白熱球をUV光源に置換すれば銀塩プリント用の引き伸ばし機が使えるからである。

スライドプロジェクタを改造した手製の引き伸ばし機に始まり、35mmフィルムにはアタッシュケースのLucky Attache-35(Nikon EL-NIKKOR/1:4/f=50mm)、

Cyanotype print made on an old photographic enlarger directly from an analog negative film without using a conventional contact printer and digital negative processing


35mmフィルム及び120フィルムにはLucky II-C (Fujinar-E75mm F4.5)、

Cyanotype prints (test prints) made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from 35mm negative films <<.  Those were made without conventional contact printing and digital processing.




そしてガラス乾板には昭和11年(1936)製乾板用引き伸ばし機(近江屋写真用品=ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=105, 1:6.3)

Cyanotype print made on an old photographic enlarger directly from a photographic dry plate (glass plate) without using a conventional contact printer and digital processing


をヤフオクで『格安』で購入し、それらを使い分けることによってほぼ思った通りのプリントができるようになった。プロダクティビティの塊たる引き伸ばし機はモノづくり華やかなりし昭和の遺物。モノとしての存在感(リアリティ)はいまどきのペラペラとしたデジタル製品と比べれば半端でない。プラスチックを使わないアナログのメカニズムは百年経過しようと実用に耐える。新たな目的を与えればすぐに復活させることができる。ここがわずかなライフスパンの為だけに設計製造されもっぱら消費されるのみのデジタル製品とは異なるところだ(拙稿「百代の過客」「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」)。

中華製懐中電灯タイプのブラックライト(FOCUSPET 100 LED)から取り外したユニットを電池の代わりにAC/DC adaptor (9V/350mA)で駆動したUV光源がサイアノタイプの長時間の露光には最適と判った。

また、印画紙面上のピント合わせに、小穴式ピーク・引伸用ピント・ルーぺI型(No. 2000)をiPodTouchのカメラと接眼レンズアダプタを介して連動させることで、iPodTouchの液晶画面上で合焦が可能となった。395nm近傍の微弱なUV光とは言えどもピント・ルーペで覗くことは目に良くないが、この手段ならばそうせずに済む。

Cyanotype print made on an old photographic enlarger directly from an analog negative film without using a conventional contact printer and digital negative processing


20枚程度(4時間/枚)プリントするとさすがに光が弱くなるが、ブラックライト自体は3000円以下でアマゾンで購入可能な品物なのでコスパは悪いとは言えないだろう(デジタルネガ作成に係る費用に比べれば)。何よりも、銀塩プリントをするように引き伸ばし機でサイアノタイプ・プリントができる点は、デジタル・ネガ & コンタクトプリンタの工数や手間と比較しても、やはり一利あると思う。そして、銀塩プリントのような暗室は要らず(外光が差し込まなければ室内灯の下でプリント可能)、焼き上がりの次第を都度視認できる点はデジタルネガに覆われて焼きつけ面を視認できないコンタクトプリンタにはない利点でもある。そして、印画紙上で自在に光像を拡大縮小できる点はOHPフィルムのデジタルネガに勝る。

フィルムで撮影し引き伸ばし機でプリントする工程にデジタルは介在しない。アナログで完結する写真の意義は銀塩プリントであればそれなりの工数と手間と知識を要するが、サイアノタイプでは要しない。銀塩プリントの手軽な代替手段となり得るということも判った。オリジナルのネガフィルムをそのまま用い、時間をかけてゆっくり焼き付けることでサイアノタイプの感光剤のグラデーションの可能性を引き出せることも理解した。コンタクトプリンタを使い強烈な太陽光の下で数分の内に焼く場合はこうはいかない。焼き目を視認できない上、光源のコントロールが効かない為、グラデーションに予め閾値を決めてデジタルネガを作る必要があり、結果として微妙な濃淡を再現することは難しい(少なくとも私の腕では)。

----

本稿の引き伸ばし機を使ったサイアノタイプ・プリントはCyanotype printing with an enlarger として、Flickr上にグループを作成しているが、来年(2019年1月8日)からFlickrは無料版の容量を1TBから1000点までに縮小するそうだ。アップロードできる写真と動画が1000点に制限される。無料版を使う限り、1月8日以降は、最新の1000点を残し、古い写真と動画から削除されるとのこと。Flickrの写真を本ブログでも記事中にエンベッドしているが、古い写真は削除され表示されなくなるだろう。影響大である。(詳しくはCNET Japanの関連記事参照のこと)

私のようにアナログフィルムからのスキャン画像をFlickrにアップしている場合、たとえ仮想空間上の写真を削除されてもフィルムなる現物がなくなる訳ではないが、元からデジタルデータでFlickr以外に保存していない場合はデータをローカルに退避させておく必要がある。Flickrに膨大なデジタル写真をアップロードして保存していた人々は有料版に切り替えざるを得ないだろう。デジタル媒体は仮想空間上ではときとして放浪し無宿者となって消える存在なのだろう。マイナンバーで括られる人間の存在も同様にデジタル化しつつある。デジタル社会はアイデンティティの否定・無責任と虚飾・粉飾・嘘偽りの温床となりつつある。しかし、アナログフィルムにその心配はない。振り返ってみればアナログの時代にその心配はなかった。現物を透かせばはっきりとありのまま現実を見ることができたからだ(拙稿「紙は最強なり」)。

それにしても随分阿漕な手法をFlickrの事業主(SmugMug)は取るものだと少し憤慨している。自作アナログ写真・サイアノタイプ・プリントのみ集めたブログを正月休みにも別に作ろうかと思案中である。

(おわり)

posted by ihagee at 04:05| サイアノタイプ