(Taro Okamoto, Short cinematography)
(拙稿「9mmフィルムムービー・その2(Taro Okamoto, Short cinematography)」より)
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フランス・パリで11月23日開催された博覧会国際事務局(BIE)総会での投票で、2025年国際博覧会(万博)の開催地に大阪が選ばれた。
”たこ焼き店店長の谷真一さん(35)は「外国人観光客のさらなる増加を期待できる。名物を紹介したい」と期待。観光に訪れた埼玉県の大学1年の女性(19)は「東京五輪後は経済が落ち込み就職難になると思う。万博で経済が潤ってほしい」と話していた。”(共同通信・11月24日報)
「日本が関西が世界に認められたことが一番うれしい。きょうから2025年に向けた新しいスタートになる。おめでとうございました!(新井純大阪府副知事)」
”関西経済連合会の松下正幸副会長は「集まったかいがありました。事務局で2通も原稿を用意してくれた。これ(失敗した場合の原稿)はいりません!」と声を張り上げた。”
(共同通信・11月24日報)
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「技術は金になるが科学は金にならない。自然の法則を理解することは現実の役に立たないと,多くの日本人が考えている。ここから抜け出さないかぎり,日本に科学が根づくことはありえない。」(故 糸川英夫博士)
”「企業のニーズ」に基礎研究が潰される・・すぐには何の役にも立ちそうもないのが、基礎研究である。大学が、すぐ役に立つことを重視していたら、基礎研究は育たない。ところが日本では、基礎研究ができる予算がどんどん削られ、将来の企業を支えるべき科学的知見や新しい技術が生まれにくくなっている。その結果、「研究者になろう」という夢を若者から奪っている。 ”(古井貞煕 豊田工業大学シカゴ校 (TTIC) 学長)
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何を認められたというのだろうか?誰が浮かれ騒いでいるのだろうか?
観光だ経済だとハコモノ(土建屋)テーマパークでカネ儲けの算段が始まる。東の五輪に西の万博。共通するは理念なき狂騒。
科学(基礎科学)とその応用たる産業技術の区別さえなく、前者を蔑ろにし後者にカネの成る木を追い求める。先の万博(Expo '70)から半世紀経ってもこの有様。
否、「日本人は科学の成立と本質について誤解している。何か機械のようなもの、すなわち単に成果を上げ、無造作に別の場所に移して仕事させる機械のように考えている。科学の成長には一定の風土と環境が必要であり、生き物である(エルヴィン・フォン・ベルツ博士)」の明治9年から一世紀以上経ってもこの有様である。
「企業のニーズ」の万博の陰で、「生き物」たる科学の樹は枯れるばかりである。(拙稿『「科学の樹」のないこの国の暗愚』)
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「人類は進歩なんかしていない。なにが進歩だ。(岡本太郎)」(拙稿『「反博の塔(岡本太郎)」』)
科学万能・技術礼賛・未来志向の一億総予定調和だった先の万博(Expo '70)にあって、独り原始・古代の生命の逞しさを以って果敢に反抗した岡本。その通り、技術礼賛は原発事故を招来し、放射能なる原始(原子)のパンドラの箱を開けてしまった。科学も技術も太刀打ちできない。そう学習すれば、何を以って再び科学万能・技術礼賛・未来志向の一億総予定調和を繰り返そうというのだろうか?
(おわり)
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