ライトボックス(拙稿「サイアノタイプ - その47(引き伸ばし機)」)を押入れから出したものの今ひとつ撮影する気になれずまた仕舞い込んだ。
昭和11年(1936)製の乾板用のハンザの引き伸ばし機(ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=105, 1:6.3)を用いたサイアノタイプ・プリント(水彩画用のvif Art (B5 H.P. surface)に薬剤塗布し印画紙とする) に戻る。
コンデンサーレンズは一枚だけ使っているが、レンズの凸側に輪状に薄く傷があり光の当たり方次第では印画紙上に影を落とす。
1920年代の10.5 x 8cm 大のガラス乾板を使い、UV LED光源で二時間焼いたものだが、稚いファースト・キスに同心円状に薄く輪が写り込んでいる。
そこで、平らな反対の面にリアプロジェクション用の透明なフィルムを切り出して貼り付けてみた。結果は影が出なくなり均一に光が印画紙に届くようになった。
1900年頃の10.5 x 8cm 大のガラス乾板の、ファーコートに身を包みヴィクトリアン朝の巨大なボンネットを被った夫人の像(二時間焼き付け・水洗後ジャスミン茶でトーニング)。
同じく1900年頃の10.5 x 8cm 大のガラス乾板の親子の像(二時間焼き付け・水洗後ジャスミン茶でトーニング)。経年でコロージョン(腐食)があるが幸い像は侵されていない。
時代は遡るほど、服飾は手が込みそれに身を包む人も風格を伴うようだ。その時代の人が現代人のラフな格好をみたらきっと卒倒するだろう。服飾・装飾の豊かさというものは時代と比例するとは限らないのかもしれない(拙稿「ガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)」)。撮られるということが日常でなく、ピンと背筋を伸ばしそれなりにかしこまるのが作法だったその昔を思い出した。後々まで残るのだからと身形をただした人々をアナログ写真は記録したのかもしれない。
(1950年代東京・35mmフィルム / Lucky II-C (Fujinar-E75mmF4.5)で七時間焼き付け)
(1950年代積丹美国・120フィルム / Lucky II-C (Fujinar-E75mmF4.5)で七時間焼き付け)
(おわり)
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