2018年07月26日

サイアノタイプ - その48(引き伸ばし機)



昭和11年(1933)製の乾板用のハンザの引き伸ばし機(ハンザ特許引き伸ばし機)のレンズボードとベローズは「あおり」を行うことができる。

「あおり」は通常撮影上のテクニックであり、ゆがみの補正目的で用いられる事が多い。しかし、別の用い方もある。それはライズ(逆あおり)での特殊撮影である。

"平面に位置する被写体を撮影する際にあおりを行って意図的に焦点面を傾け、被写体の一部のみに焦点が合うように使用することもある。この手法を行うと、現実の風景をあたかも鉄道模型やジオラマをマクロ撮影したかのように描写することができる。この手法は特に「逆あおり」(逆ティルト撮影)と呼ばれる。" Wikipediaより

しかし、アナログを標榜する本ブログにおいて、このようなバーチャルな手段は用いたくない。撮影時に「逆あおり」(ライズ)を行う場合は、あおり機能があるRolleiflex SL66を使う。

Rolleiflex SL66 with TTL meter finder / filmed by Homemade lens (using a x2.3 magnifier lens, a x2.0 magnifier lens, etc. ), Fuji Pro 160 NS / Rikugi-en, Asakusa (Tokyo, Japan), April 1, 2016

(Rolleiflex SL66 / Fuji Pro 160 NS ・六義園 2016年4月1日撮影)

虫眼鏡レンズに「逆あおり」(ライズ)を組み合わせると焦点面が極端に傾く。

撮影上の「逆あおり」(ライズ)があるように、プリント上の「逆あおり」(ライズ)もある。今ならソフトウェアのデジタル加工で簡単に行うことができる。つまり、「被写体の一部のみに焦点が合うようにする」は何もカメラに特殊な仕組みを施さなくとも、普通に撮影した写真のデータをソフトウェア的に加工すれば可能ということだ。

たとえば、Fotor Photo Editor (Mac版)では撮影した写真の被写体の一部のみ、ソフトウェア上で絞り値を変えることができる。

Glass Plate Negative c. 1900's-30's Street Scene & Vehicles, Poitiers France

(Maurice Couvrat(Maurice Adolphe Eugène Couvrat)の撮影したガラス乾板をスキャンした画像)

を上述のソフトウェアで前景の一部のみ絞り値を開放近くに設定すると以下の様に描写し直すことができる。

スクリーンショット 2018-07-23 2.24.28.png


同じガラス乾板をハンザの引き伸ばし機のレンズボードを逆ライズに傾けサイアノタイプ・プリント(vif Art (B5 H.P. surface)使用)を試みた。

Cyanotype print made on an old photographic enlarger directly from a photographic dry plate (glass plate) without using a conventional contact printer and digital negative processing

(古い薬剤を用いたので焼き付けに五時間要した・水洗オキシドール漬後トーニング無)

ミニチュア風写真(ジオラマ)とインスタグラムでも話題となる技法はデジタル写真にはじまったのではなく、実は百年前からカメラや引き伸ばし機では確立された技法だった。それを知っている若者は少ないだろう。

(おわり)



posted by ihagee at 03:42| サイアノタイプ