サイアノタイプのプルシアンブルーは美しいが、紙の上に表わそうしている画像と時にアンマッチな場合がある。また、本稿のように引き伸ばし機とUV LED(弱い紫外線光)で長時間緩慢に焼いたプリントは印画紙に塗布した薬剤が完全に感光し切っていないのか、薄く仕上がる場合が多い。
全体の印象を変えたり、コントラストを付けたい場合、トーニングという処理を行う。
もともとのプルシアンブルーにこそ価値があるとする向きには邪道とされるが、私は積極的に用いている。太陽光の下でしっかり焼いたプリントでは強くその結果は出るが、本稿のプリントでもだいぶ印象が変わるものだ。
拙稿「Flexaret IV - 薔薇の花束ほか(モノクローム)」でのフィルム写真を使って様々トーニングを試みた。元の写真はフレクサレットIV(Flexaret IV)にKodak TRI-X400を詰めて2016年12月24日に撮影。レンズは80mmのBelar。
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以下は、いずれもNIKON EL-NIKKOR 50mm F2.8で引き伸ばした。
先ずは、トーニングをせず、水洗オキシドール漬のみしたもの:
水洗オキシドール漬後、ジャスミン茶でトーニングしたもの:
水洗オキシドール漬後、ジャスミン茶とコーヒーでトーニングしたもの:
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さて、タイマーを設定し十時間焼いてみた。太陽光の下で二、三分焼いたと同じ焼き目がついて、仕上がりの具合もコンタクトプリントと似ている。太陽光ではうっかり焼き過ぎて失敗ということが多かったが、本稿のプリントではその具合が緩慢なので焼き目を直接視認しつつコントロールできる点が良い。
その結果:
1950年代の北海道積丹美国の夏模様を写したブローニーのネガフィルムが元。水洗オキシドール漬後、ジャスミン茶でトーニングした。その方が昔の写真には合っているような気がする。vif Art (B5 H.P. surface) に細部まで絵をのせることができた。この細部の再現性はデジタルネガであれば省略される情報の差だろう。なお、小穴式ピーク・引伸用ピント・ルーぺI型で印画紙面上のピントを合わせた。
(おわり)
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