2018年06月14日

「解決済み」言及せず



マスコミは今、以下の内容をしきりと伝えている。

「解決済み」言及せず=拉致問題で金正恩氏―日朝会談を本格模索・政府

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領から日本人拉致問題を提起された際、「解決済み」とする従来の立場に言及しなかったことが13日、分かった。安倍晋三首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行が、米政府から日本政府に伝えられた内容として記者団に明らかにした。日本政府は前向きに捉えており、日朝首脳会談を本格的に模索する方針だ。(時事通信・6/13報)

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この報道を耳にすると、あたかも、キム委員長がトランプ大統領から「拉致問題は解決済みと認識しているのか?」と問われ、答えを留保したかに思わせる。

しかし、そもそも、米朝首脳同士の会話の受け答えが詳らかでもない。政府は国民にその受け答えの詳細を伝えていない。拉致問題は解決済みか否かを、トランプ大統領がキム委員長に問うたのか否かも明らかでない。しかし、あたかも、問いたがキム委員長が口ごもったかの、希望的イメージだけを政府は国民に植え付けようとする。

国会での安倍総理はご飯論法を駆使し、答えをはぐらかしているが、その論法でいえば、訊かれていないことには答えないが、否定したわけではない、ということになる筈だ。そもそもトランプ大統領が拉致問題について、「拉致問題は解決済みだと認識しているのか?」とまで踏み込んでキム委員長に質問したとは考えにくい。キム委員長との対談で人権問題についてはほとんど触れなかったとトランプ大統領は明かしているのに、日朝間の問題にのみ踏み込んで受け答えがあったとも思えない。

マスコミの一部からは、

「いま、萩生田(光一・自民党幹事長代行)さんがマスコミに『金委員長は「解決済み」とは言わなかった』という情報をしきりに流していますが、仮にそうだったとしても何も言ってもらえなかっただけでしょう。どれだけハードルを下げてるんだ?という話です(笑)。しかも、発言の主は萩生田さんですからねえ。実際は『解決ずみ』に近いゼロ回答の反応を伝えられたのに、それをごまかすために真偽不明の情報を流している可能性もある」

などと、すでにその言説の真偽不明ぶりが指摘されている。

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なぜ、客観的に相手の言葉を取らないのか?
無回答なら無回答である。否、ゼロ回答と客観的に受け取るべきだ。

拉致被害者の曽我ひとみさんは、メディアに向けたコメントのなかで「結果は何も出ませんでした」「もっと具体的な答えを引き出してほしかった」として、「とても残念としか言えません」と客観的にコメントしている。

客観的な立場で物事を受け止めず、希望的観測を早々と打ち上げることは、相手に足元を見られることでもある(ハードルを下げる)。そうでなければ困る・苦しいと、相手にこちらの立場を示すことは外交上で弱みを相手に握られることだ。

かの巌流島の闘いでは、早々と鞘を捨てたことを宮本武蔵から己の敗北の予兆などと指摘され、佐々木小次郎はかっと頭に血が上り、冷静さを失ったところを武蔵に梶で額を割られたが、日本政府の今般のコメントは、「小次郎破れたり!」と相手(キム委員長)に言わせる危険性がある。

今回の政府筋が打ち上げた観測は稚拙に過ぎる。北朝鮮は「拉致問題は解決済み」とあらためて発表する、ということがいかに日本政府(安倍政権)にダメージを与えるか、を認識し、今後この問題については常に優位な立場を取り続けることだろう。日本政府はそう発表されることを常に恐れなくてはならなくなった。

自分で何一つ直接交渉せず、他人同士の交渉事を手前勝手に都合よく解釈すれば、事実(ファクト)と乖離することをこの政権はわからないらしい。

キム委員長が「これまで話し合いを否定し続けた安倍政権とは拉致問題の交渉は一切しない。我々が生まれ変わったのだから、安倍政権に代わる新たな政権とのみ交渉する」などと一言でも発表すれば、安倍政権の存立すらキム委員長の手の内に握らせることになる(そうはっきり言ってもらった方が、良いのかもしれない)。

(おわり)

タグ:拉致問題
posted by ihagee at 03:13| 政治