2018年05月06日

サイアノタイプ - その15(引き伸ばし機)



" 石が温まるのに時間がかかるので、ゆっくり待ちます。芋の大きさによって時間は変わりますが、だいたい一時間〜一時間半、じっくり温めていきます。"(参照:Hondaキャンプ

結果は、実に美味い石焼き芋。遠赤外線でじっくり低温加熱ということらしい。蒸し芋はダメなようだ。

サイアノタイプのUV LED焼きは、喩えれば、石焼き芋であろうか。今は体に良くないと推奨されないが、子供の頃は夏休み中にこんがり日焼けするのが元気な子供印だった。やけどになって皮が剥けない程度にクッキーフェイスの仲間ほど、きっと経験的に短時間の直火焼きは避けていたのだろう。長い時間をかけて少しづつ焼けばやけどにならないことを知っていたに違いない。夏の太陽光はそれだけ紫外線が強烈だ。私などは休み明けに自慢したくて無理に日焼けして「お前、家でも焼けたのか」と友人から剥がれかかった二の腕の皮をペリペリとめくられたもんだ。赤外線も紫外線も上手に使うには按配が肝心。

石焼き芋やクッキーフェイスを作るつもりで、引き伸ばし機を使ったサイアノタイプには気長に向かい合えば良いのかもしれない。しっとり甘く、綺麗に小麦色にしたければ時間がかかるということだ。ネガフィルムにも目にもその方が優しいだろう。私はこの猛者のように強烈なLED光をフィルムに浴びせたくはない。通常のLED光(可視光)には赤外線も含まれ集光すれば熱エネルギーに変わるから下手をすればフィルムが溶ける(Slyka's Stuff)。これは昔の8mmフィルムの映写機と同じだ。フィルム送りが滞るとたちまちメラメラとフィルムが溶けて煙が出る。

従来のコンタクトプリンターを用いたサイアノタイプ・プリントはデジタルネガで覆った蒸し芋の直火焼きに思える。つまり、甘く小麦色にするには短時間での微妙な按配が必要だった。私はどうもこの按配が掴めず、失敗することの方が多かった。しかし、サイアノタイプ・プリントの醍醐味は予測が付きづらいところにあるのだろう。その思いがけない結果こそ作品としての価値となる。

私が今試みている方法は、その本来の醍醐味から少し外れているのかもしれない。

Cyanotype print successfully made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from a 120 negative film <<. This was made without conventional contact printing and digital processing.

(1950年代の古いブローニーのネガフィルムを用いた。焼き付けに7時間を要したが、狙い通り爽やかなイメージを表すことができた。このイメージにはトーニングは不要だろう。)

Cyanotype print successfully made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from a 120 negative film <<. This was made without conventional contact printing and digital processing.

(1950年代ブローニー・ネガフィルム・タイマー設定で七時間焼き付け、水洗後ジャスミン茶でトーニング)

Cyanotype print successfully made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from a 120 negative film <<. This was made without conventional contact printing and digital processing.

(1950年代 35mmネガフィルム・タイマー設定で七時間焼き付け、水洗後ジャスミン茶でトーニング)

(おわり)

追記:
UV LEDは可視光線が少ないので印画紙面上の顕像はピントが合わせづらい。そこで黄色の付箋を当ててみた。それなら合わせ易い。感光剤はJacquard cyanotype kit (クエン酸鉄アンモニウムとフェリシアン化カリウムの古典的な組み合わせ)を用い、それぞれの化合物を純水で溶かした溶液(A剤、B剤)を冷暗所で一年寝かしたものを同量混合し、画材店ならどこでも売っているvif Art (F2 H.P. surface) paperにスポンジ刷毛で塗布し乾燥させた印画紙を用いている。F2の大きさで六枚印画紙を作るとするとおおよそ2〜2.5ml/ccずつ溶液をそれぞれ用いる。百均で売っているコスメ用のシリンジはこの目盛が付いていて便利(セリアのシリンジは針が長いのでJacquard cyanotype kit に付いている遮光ボトルを傾けなくとも溶液を吸い上げることができる)。
posted by ihagee at 13:45| サイアノタイプ