2018年05月03日

サイアノタイプ - その10(引き伸ばし機)



前回からの続き。

ヤフオクで中古の引き伸ばし機(Lucky II-C)を購入し、各部を丹念に清掃後、さっそくUV LED (100球)を組み込み、引き伸ばし機に元々付いていたレンズ(Fujinar-E75mmF4.5)で焼き付けを試みた。

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藤本写真工業社製のこの引き伸ばし機にお世話になった諸兄も多いと思う。斯くいう私も中学生時代写真部の暗室でこのLuckyと付き合った思い出がある。購入したLucky II-Cは1950年代の製品であるが、ガタも塗装の剥がれもなく美麗な状態であった。イーゼルとレンズ(Fujinar-E75mmF4.5)も付属していたが、フィルムキャリアーはない。経年の汚れを拭き取り、レンズ類を清掃しUV LED (100球)をお釜状のランプハウスのベース(コンデンサーレンズとランプハウスの仕切り板)の上に載せ、サービス版の古い写真スタンドからカバーグラス(2枚)を借用しフィルムキャリアーに仕立てて、35mmフィルムを間に挟んでイーゼル上でピントを確かめてみた。

Cyanotype prints (test prints) made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from 35mm negative films <<.  Those were made without conventional contact printing and digital processing.


中華製(Focuspet)のライト(懐中電灯型)から取り出したLEDユニットは可視光と紫外線領域の境目付近の波長を狙っているので、部屋全体を暗くすれば青白く像がイーゼル上に浮かび上がる。このライトにはUVカットグラス(メガネ)がおまけで付いているがこのメガネで見ると像は緑色に投影されている。

vif Art (H.P. surface) のF2の大きさの紙を印画紙として用いるので、その大きさでピント合わせをするのだが(レンズの絞りで行う)、今ひとつピントが来ない。ランプハウスのアームを一段高い位置に固定するとピントが出てきた(レンズを絞ると光源のLED球が点となって見えるので、レンズは開放とする)。

この状態で印画紙を装填し試し焼きを行った。デジタルネガで覆うコンタクトプリンターと異なり、直接焼き面を視認でき且つ部屋の照明をつけても焼き具合に影響しないところが良い。引き伸ばし機を用いたことでライトリークも最小化され、フィルムキャリアーと印画紙面以外に紫外線が当たる箇所がないので、無用な紫外線に当たる心配もなさそうだ。

Cyanotype prints (test prints) made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from 35mm negative films <<.  Those were made without conventional contact printing and digital processing.

(このように焼き付け過程で部屋の照明を付けても焼き付けに影響しないと思うが、念のため、焼き具合を視認する時以外は照明は暗くした)

スイッチング方式のAC/DCアダプター(9V/350mA)を用いたのでユニットに常に安定して給電されるのであろう、テストプリントの焼き具合(焼き時間)も何枚か試みるうちにある範囲に収まることが判った。用いるネガの状態にも拠るが、一時間が目安らしい。晴天下、コンタクトプリンターで焼けば3分程度なのでえらく時間がかかるように思うが、自然光の不安定さとコンタクトプリンターの視認性の悪さを考慮すれば、他の仕事をしながら、たまにちらっと焼き具合を確認すれば良いのだから一時間などあっという間に経過する。前回まで報告したスライドプロジェクターの薄いコンデンサーレンズでは中央部に集光しスポットとなって印画紙面に不均等に像が投影されていたが、引き伸ばし機の分厚く大きなコンデンサーレンズではフィルム面に隈なく光を当ててくれる。通常、銀塩写真の焼き付けで用いる白熱球の光とは特性が異なるLEDのUV光であっても、ほぼ均等に当たっているようだ。

最初の10分で印画紙にだいたい像が浮かび上がる。

Cyanotype prints (test prints) made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from 35mm negative films <<.  Those were made without conventional contact printing and digital processing.


その後、オリーブ色に焼き目ができるまでが時間を要することも判った。結果が一時間ということだった。

Cyanotype prints (test prints, almost successfully printed) made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from 35mm negative films <<.  Those were made without conventional contact printing and digital processing.

(水洗した状態)


オキシドール浴をし出来上がりを確認すると、コンタクトプリンターでは得られないグラデーションが表されていることが判った。デジタルネガを作成する際に間引かれる情報(インクジェットプリンターのインクとOHPフィルムで表せる情報は本来限られている)がアナログネガで直接焼き付ける場合は一切ないためだろう。サイアノタイプは階調に乏しいと言われるのはこのデジタルネガに由来し、アナログネガを用いればソルトプリントと遜色ない程度まで階調を表せることも判った。これは一大発見である。

Cyanotype print successfully made on an old enlarger (Lucky II-C ) >> directly from a 35mm negative film <<.  This was made without conventional contact printing and digital processing.

(オキシドール浴を行い乾燥させ、スキャナーで読み込んだ結果)


もう一段焼き込んでも良いかもしれない。

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サイアノタイプに引き伸ばし機を用いることはできないという「常識」とサイアノタイプは表現階調に乏しいという「常識」は、いずれもこの試みでは覆った。撮りためたネガフィルムが本来持っている情報をアナログ出力できる喜びは大きい。アナログ工程でアウトプット(印画紙への焼き付け)を完結することができる。銀塩の印画紙が将来手に入らなくなっても、サイアノタイプなどオルタネーティブな手段を従来の引き伸ばし機で試みることができる。これは楽しい連休となりそうだ。さらにこの続きを報告したい。

(おわり)

追記:
LEDについては過去辛口な記事を掲載したが(拙稿「LEDは<省エネ>に非ず」)、身勝手ながら、この用途に於いては大いに歓迎したい。

posted by ihagee at 06:50| サイアノタイプ