2018年04月28日

サイアノタイプ - その8(引き伸ばし機)



サイアノタイプは、通常アナログ・フィルムをスキャナで読み込んで、パソコンの画像編集ソフト上でグレースケール化した上、反転=陰画(ネガ)・拡大し、OHPフィルムにプリントしたもの(デジタルネガ)を、この印画紙に密着させて太陽光または紫外線で焼き付ける方法が採られる。

この場合は、OHPフィルムを作成する段階でアナログ・フィルムに記録された情報をデジタルの仮想データ化せざるを得ないので、厳密にはアナログ「写真」に当てはまらないということかもしれない。

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せっかくアナログ・フィルムがありながら、デジタルネガを作成せざるを得ない点、私としては納得がいかなかった。焼き付けまでアナログにこだわるのであれば、引き伸ばし機が必要となる。しかし、感光度が極端に低いサイアノタイプでは光源をよほど強化しなければその手段は採れない。数百ワットの電球を使えばフィルムはたちまち溶けてしまうだろう。100WのLEDを組み込んだ引き伸ばし機でサイアノタイプを作成している人もいるが、放熱処理などかなり大掛かりである。また、光があまりに強すぎて印画紙面で反射し綺麗に焼き付けることができないようだ。(Slyka's Stuff)。

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感光に必要な波長域は可視光線領域に近い紫外線を含む395-400nmである。アマゾンで色々と探してみると、LEDを用いたUV 紫外線ライトが使えそうなことがわかった。単三電池6本直列9Vで100個のUV LED球を点灯させる中華製(Focuspet)のライト(懐中電灯型)を手に入れた。UVカットグラスも付属しているが3,000円もしない。

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このライトに組み合わせる引き伸ばし機は、中古のスライドプロジェクターを利用した(Minolta Mini 35)。このプロジェクターに付属のレンズでは焦点距離が遠すぎるので、望遠レンズの余した前玉を組み合わせ、三脚にセットして俄仕立ての引き伸ばし機を作成してみた(なお、Minolta Mini 35については「
Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その6)」で取り上げた通り、Minolta mini 35からP-Rokkor 2.5/75mmレンズを取り外して使っていたが、今回、再びMini 35に戻した)。

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胴体はスライドプロジェクターゆえに、35mmのストリップは組み込みにくい。Minolta Mini 35には純正でポジのストリップをマウントできる付属品があるようだが、まずは手差しでフィルムを組み込んでみた。

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コンタクトプリンターではデジタルネガに隠れて焼き面が確認できないが、引き伸ばし機であれば随時視認ができる(紫外線が放射されているのでUVグラスは必須)。およそ40分程度で焼きあがった。

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俄仕立ての引き伸ばし機なので、フィルム面全体をカバーして印画紙面上に焼き付けることはできていないが、いずれ改良する予定である。

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印画紙との距離に比例し光も減衰し露光時間も長くなるが、それでもvif Art画用紙(F2)の大きさまで24x36mmのフィルム面を引き伸ばせることがわかった。なによりも、オリジナルのネガフィルムをそのまま使えるのが嬉しい。引き伸ばし機には尚、改良の余地があるが、この連休中の課題としたい。

(おわり)

追記:
バッテリー駆動だと二時間も連続して使用すると消耗し光量が落ちることがわかった。また、単三電池6本分嵩張る上に重量もあるのでここは思い切ってLED部分のみ取り外し、家庭用電源からACアダプターを介して給電することにした。砲丸型のLED100球は直接プリント基板に同心円状に半田付けされているのでLED部分そのものは単三電池一本分の重さもない。
最寄りのハードオフでSONY製の9VのACアダプター(600mA)の中古品を300円程度で買い求めたが、テスターで出力をチェックするとなんと11Vも出ている。家電量販店で新品を買ってあらためて組み込むことにする。

posted by ihagee at 13:45| サイアノタイプ