
森友学園問題は、役人の「忖度」などではなく官邸・安倍首相からの「教唆」を疑うべきと、私は先のブログ記事で述べた(『「忖度」ではなく「教唆」』)。
唆したことこそ安倍首相にとって突かれては困ること。行為を唆す「教唆」こそ、野党は安倍首相に疑うべきだ。
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学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は野党の質問攻めになった国会質疑、安倍首相の秘書官がPMメモなる指示を佐川氏に手渡していたと文藝春秋が報じるようだ(文藝春秋・2018年5月号・4月10日発売・10ページにわたって掲載される)。
「もっと強気で行け。PMより」
その結果は佐川氏の虚偽答弁だった。
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「PM」は「プライムミニスター(首相)」である。PMメモの存在は以前から取り沙汰されていた。官僚に政策ではなく、政局絡みで指示を与える。委員会室で野党の目も憚らずPMメモを渡しているということは、日常的にPMメモを官僚に渡してはPMの指示に従うように強要していたということだ。
森友学園問題は政策ではなく、利権の絡んだ政官疑惑であり安倍首相・与党にとっては政局に他ならない。官僚を政局から遠ざけることが、行政府の長たる安倍首相の立場であるのに、その政局に都合する発言を指示していたとなれば、これは強要・教唆である。
政策では協力しても、政局に協力してはならないと政治と官僚の距離が「吏道」。「吏道」に背き官吏としての良心に苛まれて自死した役人もいれば、「吏道」に背き政治との距離を密にした佐川氏は「官吏の鏡」と安倍首相に讃えられた。いずれにせよ、森友学園問題で表沙汰となった財務省の公文書改竄は吏道に反した政局協力である。
つまり、吏道に反する政局協力を、安倍首相は官吏に唆していた・強要していたと、疑うのは当然である。この場合の受益=政局であり、受益者は政権である。第一義の受益者でもない官僚が勝手に安倍首相の立場を忖度することなどないだろう。PMメモは上からの指示であり、そのメモの発信者は受益者たるPMであり、その益となるように振る舞えと官僚に命じることがそのメモの内容である。
「吏道」に背かせれば、当然、行政組織はガタガタになる。厚労省・文科省・国交省・防衛省などで明らかになった行政文書の管理杜撰・捏造・改竄は全て、元を辿れば、吏道に反した政局協力を求める安倍首相・官邸の指示・圧力があるからに他ならない。
安倍政権以前の過去の自民党政権・民主党政権でここまで、行政の不信頼が増大したことはない。安倍首相が行政府の長となってからの話であることに、特異点がある。それは、政策(国民の受益)ではなく政権(首相の受益)のために官僚・行政を操縦していた安倍首相の存在であろう。官僚・行政が(信用)失墜するのも、その不徳な操縦者に大元がある。
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野党も国民も「官僚が勝手に忖度」などということで納得してはならない。「忖度」で落とし所を見つけて胸を撫で下ろしているのは他ならない安倍首相その人だからだ。つまり、「指示」こそ彼にとって突かれては困ること。直接指示せずとも、行為を唆す「教唆」こそ、野党は安倍首相に疑うべきだ。
(おわり)
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