平昌五輪フィギュア男子フリー競技で羽生結弦、宇野昌磨両選手が金銀を勝ち得た(羽生選手は同種目二連覇の快挙)。ひとえに両選手の努力と弛まぬ研鑽によるものだ。大いに祝したい。
官邸(安倍首相)は羽生選手に直接電話で祝辞を伝え、Facebookに写真付きで報告している。

2014年前回ソチ冬季五輪後の首相公邸での懇親会写真を用いている(2014年4月25日)。懇親会では、安倍首相が羽生選手に金メダルをかけてもらう場面もあった。その場面の写真を使っている。
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なぜこういう写真を使うのだろうか?
"羽生選手が後ろ姿で安倍首相が正面に写っているから"・・ということを言うつもりはない。それよりも問題だと思うことがあるからだ。つまり、
オリンピック競技大会は、個人種目もしくは団体種目での競技者間の競争であり、国家間の競争ではない(五輪憲章より)。オリンピックで勝利をおさめた栄誉は、あくまでも選手たちのものだと五輪憲章では定めている。オリンピックで素晴らしい成績を収めた選手を、国としてではなく、個人としてたたえる(JOCのHPより)。国旗掲揚・国歌斉唱やメダル授与は個人の栄誉を讃えるため(手段)であって、特定の国家や政治を讃えるため(目的)ではない。
だから、憲章の精神(オリンピズム)を尊重すれば、競技の栄誉は選手(個人)のものであって、国のものではない。羽生選手が自身(個人)に与えられた栄誉(メダル)を国を代表する安倍首相にかけようとする(その気持ちはわからなくもないが、本来はしてはならないことだ)写真は本来その精神に立ち帰れば、官邸はFacebookで用いるべきではない。
個人に与えられた栄誉を首相を通じて国のものにすることは、オリンピズムに反する。
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「羽生君スゴイ」を「日本スゴイ」にサラッと変換しようとするこの写真の掲載に、ネットではさっそく疑問の声が上がっている。
羽生結弦という個人が栄誉に浴するべき、その「羽生君スゴイ」を「日本スゴイ」「日本人スゴイ」に変換することは、極言すれば羽生結弦という個人を毀することである。国家や政治に利用してはならない。
官邸は羽生結弦氏に国民栄誉賞を付与することだろう。彼は若い。脇目も振らずスケート一筋にやってきた。だけど、他に学ばなけれならないことがある。
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「すべての国民は、個人として尊重される。」(現行憲法第13条)
「全て国民は、人として尊重される。」(自民党憲法改正草案での第13条)
草案では「個人」を「人」に、即ち、国民は「絶対的に(自ずと)尊重される」を「相対的に(国家と)尊重される」に改めようとしている。現行憲法の基調たる理念の否定・転回にも当たる重大さを孕んでいる。
この否定・転回の伏線に五輪が用いられようとしていることに、我々国民は危惧せねばならない(拙稿『「個人」か「人」か(憲法第13条)』。官邸Facebookの写真一つにもその伏線を感じ取るべきだろう。
(おわり)
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