以前、「真空管ラジオから考えること」で触れた1950年代の旧西独Loewe社製のAtlas 2790Wは、たまにインターネットラジオとして使っている。
このAtlas 2790Wは数年前にeBay DEから購入した。まず修理(オーバーホール)を秋田の昔ラジオ少年に依頼した。修理記録はこの御仁がブログに掲載している(「Loewe「2790W」修復記その2」)。「その2」とあるのは「その1」があるからで、最初に同型機を購入したものの輸送中に破損し見るも無残な状態で届いた。これが「その1」として修理された一番機だった。しかし、この「その1」は出品者が勝手に回路を改造したようでトーンコントロールが利かない。従って「その2」は「その1」の代替え機ということである。ピアノキー仕様のバンド切り替えスイッチにより、一つのダイヤルを操作してもFM系とAM系のダイアル指針が別々に動きランプも同期して切り替わる。
たかがラジオを鳴らすために、機械とアナログ回路と真空管の大きくずっしりとした塊が必要だった時代があったということだ。しかしその本物感(モノとしての存在感)はいまどきの軽薄短小使い捨てのプラスチック製品とは比較にならない。目的は同じでも存在する意味が昔と今では違う。修理可能な点も含めて。さすがに真空管は入手困難かと思われたが、欧米では未使用品も含めてまだ十分なストックが中古市場にあるようだ。このラジオのためにテスト済みのチューブを一揃えeBayから購入できた。半世紀以上経過しても修理可能・交換パーツ入手可能というのも、もともとそういうことを想定しロングライフの設計がなされていたからだ(拙稿「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」)。
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さて、このラジオの使い方であるが、使わなくなった古いiPod Touch(ワイヤレスでLAN接続している)をチューナとし、FMトランスミッタでFM波にし、このラジオで受信して聞いている。
FM周波数帯は日本と欧米では異なる。しかし、FMトランスミッタの上限で設定可能な周波数辺りはこのラジオの下限に相当するので受信可能。
iPod Touchのイヤホン端子(3.5mm)に直接差せるUSB充電式FMトランスミッタとして、EWINなるメーカーの安価な製品(Ewin オーディオプラグ 対応 FM トランスミッター 3.5mm)をアマゾンから購入した。中華製。国内のサポート先もある上、アマゾンでのユーザレビューも概ね良い評価だった。iPod Touchをインターネットチューナとして使うには、ネットラジオ局のストリーミングサーバーのURL(mms:)を調べて、URLをブックマークしてアクセスする。QuickTimeが起動して聴くことができるので結果としてチューナとなる。通話機能がないiPod Touchだが、無線LANでネット接続すればかえってiPhoneよりも始末が良いかもしれない。古くなったiPod Touchもこれで再利用できる。
懐かし系やジャズをライブストリーミングで放送しているオーストラリアのGolden Days Radioにアクセスすることが多い。日本との時差が1時間ということもあって、生活時間帯も一致して時計代わりとなる。モゴモゴとたまに入れ歯に舌を噛むシニアたちがアンカーを勤めている。そのせいか毎日が日曜日的のどかさがある。それ以外は、Radio Swiss Classicを聴いている。コマーシャルなしで音楽だけ。曲紹介のドイツ語が渋くクールだ。
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真空管ラジオでネットラジオ局の音楽を鳴らす。モノーラルだが音の厚みも音の温度感もデジタルとは違う。そしてモノとしての存在感の違い。昔、当たり前のように聴いていたあの音に私の世代なら「再会」していることになるが、デジタル世代には別次元の体験となるのかもしれない。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
(Radio Swiss Classic)
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(おわり)
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