手元にあるガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)のポストカード(オリジナル・いずれも1905年前後・ EPSON GT-X980でスキャニング):





























----
コロタイプ印刷(写真製版)のモノクロームのポストカードは、実物でないと美しさは判らない(上掲のポストカードのうち10枚が同製版印刷)。表現力において今もって他の印刷技術の追随を許さない製版技術であるものの、非常に手間がかかる上、生産効率性の悪さから文化財の再現といった特殊な用途以外は用いられることはなくなった。
印刷とはいえども最新のデジタルカメラでもプリントでも困難な表現の深み(デジタルのエフェクトなる偽装は論外)にすでに一世紀前のカメラとフィルム、製版技術は到達していたと知るだろう。
最高の製版技術で最美な女性を印刷したポストカードに切手を貼り、気の利いたメッセージを添えて最愛の人に送ることができた時代、漱石の目も楽しませたパントマイム劇が場末の劇場であろうと気軽に鑑賞できた時代、とは何と贅沢なことだろう。ヴァーチャリティばかりの産業技術の進展と精神的な贅沢さは反比例しているようである。
(おわり)