2017年01月03日

サイアノタイプ - その1


アナログ・フィルムのプリントが<焼き付け>、即ち、フィルムに直接光を当て、レンズを通して印画紙にケミカル処理によって焼き付ける方式(アナログ・プリント)から、フィルムをスキャナでデジタル化し仮想データ(デジタルネガ)をレーザーやLEDで印画紙にケミカル処理によって焼き付ける方式(デジタル・プリント)に置き換わって久しい。

フィルムに元々記録されている連続的に変化した物理量を、離散量(とびとびの値しかない量)に置き換えるということである。これは、フィルムを光にかざせば撮像が見える、つまりレンズの向こうの被写体と類似(アナログ)すると判るものを、数値という光にかざしても何も見えない全くの別物に置き換えることでもある。

多少乱暴な言い方をすれば、デジタル・プリントとは、符号化(コード化)した数値(仮想データ)情報であって、アナログ・フィルムに記録された情報とは全く別物ということになる。

写真という言葉が、狭義では、「穴やレンズを通して対象を結像させ、物体で反射した光および物体が発した光を感光剤に焼き付けたのち、現像処理をして可視化したもの。」即ち、対象と類似(アナログ)の結果物であるので、デジタル写真やデジタル・プリントは狭義の「写真」に当てはまらないということかもしれない。それどころか、アナログ・フィルムの撮像をブログに掲載すること自体、狭義の「写真」に当てはまらない。

「写す」とは「ありのままにうつし取る」ことで、そもそも類似(アナログ)の意味がある。「黒板の文章をノートに書き写す」、という具合である。

----

アナログ・プリントを受け付けるラボは数少ない。それなりに機材を用意すれば自製も可能だが、暗室や引き伸ばし機を用意したり薬品を用いたりと案外手間もかかる。

アナログ・フィルムを狭義の「写真」として完結させる為のアナログ・プリントにはもっと簡単な方法がある。銀に代わって鉄を用いるサイアノタイプである。



子どもの頃、雑誌の付録に付いていたのが日光写真、そして社会人に成りたての頃、図面のコピーは青焼き(青写真)の世代なので、「写真」としてのプリミティブなプリントとしてサイアノタイプは私の世代には真っ先に思い浮かぶ。

サイアノタイプには、クエン酸アンモニウム鉄とフェリシアン化カリウム(赤血鉄)の二種類の薬品(結晶)をそのケミカル処理に要する。これらの薬品は入手容易且つ毒性がない上に扱いやすい。それらの薬品を適正な割合で混ぜ合せ純水で希釈した溶液を紙の表面に塗布し乾燥させれば印画紙となる。その印画紙にネガを密着して紫外線(太陽光)に曝露した後、水で洗い流せば紙に像が定着するという簡単な仕組みである。

この印画紙は感度が低いので、銀塩フィルムに用いるような引き伸ばし機は使えない(露光させるには強力な紫外線光源が必要となる)。従って、ネガを印画紙に密着させた状態で太陽光に曝す方法が一般的である。密着焼き(コンタクト・プリンティング)なのでネガと同じサイズの焼き付けしかできない。ネガを用いないのであれば、大判カメラ(フィールドカメラ)にこの印画紙をセットして直接レンズを通して景色を露光させることもできる。但し、長時間の露光となる為、撮影対象が動くようなものには不適だろう。

通常はアナログ・フィルムをスキャナで読み込んで、画像編集ソフト上でグレースケール化した上、反転=陰画(ネガ)・拡大し、OHPフィルムにプリントしたもの(デジタルネガ)を、この印画紙に密着させて太陽光または紫外線で焼き付ける方法が採られる。この場合は、OHPフィルムを作成する段階でアナログ・フィルムに記録された情報をデジタルの仮想データ化せざるを得ないので、前述のような狭義の「写真」に当てはまらないということかもしれない。

----

そうはわかっても、プリミティブなプリントであるサイアノタイプを試してみたくなった。

クエン酸アンモニウム鉄とフェリシアン化カリウム(赤血鉄)の二種類の薬品(結晶)は薬局で手に入れることができる。しかし、ここはサイアノタイプ用品では定評のあるJacquard Products社Jacquard Cyanotype Sensitizer SetをeBayを介して購入することにした。AB二剤を各々定められた割合で水で希釈したものを混合して用いる。



コンタクトプリント(密着焼き)に用いるコンタクトプリンターはヤフオクで中古の良品を手に入れた。六切ベタ焼きができる大きさである(六切= 203mm × 254mm)。

contactprint.jpg

画用紙はまずは試しなので安価なマルゼンのスケッチブック(172mm x 250mm)、筆やハケ(スポンジハケ)はホームセンターの安物を用意。セリアで化粧品用の計量メモリのついたスポイドも購入。デジタルネガ作成用にインクジェットプリンター専用の透明フィルムを購入した。二昔前ならオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用フィルムはどこでも普通に売られていたものだが見かけない。OHP用フィルムではインクが乗らないので、トナーのコピー機以外はデジタルネガ作成に使えない。量販店でインクジェットプリンター専用の透明フィルムはA4サイズ(六切ならB5で足りるのに)しか見当たらずしかも高価だった(10枚入りで1300円ほど)。

原画を、レッタチソフトで白黒画像にし、ポジをネガに変換、左右を入れ替え、インクジェットプリンターでOHPフィルムに印刷することになるが(デジタルネガ作成)、上述のJacquard社はその一連の作業をネット上で補助するサイトを提供してくれるので、細かな調整をしないのならこれで足りる。サイアノタイプで再現できる階調は狭い範囲なのでその範囲に収まるようにトーンカーブの調整を施す必要がありそうだ。デジタルネガではなくオリジナルのネガを直接使う手もある。ガラス乾板のネガ(9×12cm)が数枚手元にあるので(拙稿「乾板写真の美」)これを用いれば、アナログネガそのままとなる。

以上で、太陽光を光源とすれば直ちにサイアノタイプ作成が可能。

----

追加として曇りや夜間に焼き付けをする場合も考慮し、紫外線露光機も準備した。簡易にはジェルネイル用のUVライトボックスなら3千円程度で手に入れることが可能(写真企画室ホトリのサイトで用例有)。ただし、六切の大きさを露光させるには小さい。ライトボックスを自作するのも良いが、ホットホイル用の紫外線露光機をeBayを介して購入した。送料込で一万円ちょっと。勿論、中華製であるがガラスの天板とメタルの筐体に5分までのタイマーも付き思ったよりもしっかり造ってあった。紫外線蛍光管(8w)は6本使用しており光源としては十分だろう。露光面(210mm x 260mm)は上述のコンタクトプリンター(六切ベタ焼用)と大きさがほぼ一致している点も良い。米国仕様(110V)なら日本でも使うことができる。このeBayの出品者は梱包も厳重で対応も素早く良い買い物だった。

uvexposure.jpg

動作状況は以下の通り(私のアップしたものではないが)。


近々、サイアノタイプにチャレンジしてみようと思う。その結果は続きにて。

(おわり)
posted by ihagee at 10:49| サイアノタイプ