フレクサレットIV(Flexaret IV)にKodak TRI-X 400を詰めて年の瀬の吉祥寺をスナップした(2016年12月17日)。セコニックのセレン露出計(Studio Deluxe II)もポケットに入れた。
チェコ共和国の共産圏時代(当時:チェコスロヴァキア)の遺物・フレクサレットの中でもこのタイプIVは最も長く作り続けられただけに信用も評価も高い。80mmのBelarは弱いとされる逆光も独特の柔らかい描写で雰囲気に変えてしまう。(この辺りは先に触れた通り「フレクサレットからティッシーを経てティヒェーに至る話」)。
グラウンド・グラス(スクリーン)は同時期の日本製の二眼に比べれば暗くピントの山が掴みづらいが、青いグリッドラインが綺麗に入っており構図は決めやすい。レバー式のボディーレリーズの操作感は極めて軽い。慣れると後期モデルのようなボタン式よりもカメラをブラさずにシャッターを切れる点で優れていると思う。


井の頭公園で子供たちの歓声が上がっていた。紙芝居ならぬ顔芝居だった。




一本横道を入れば昔からこの風景。LEDよりここでは裸電球のホッコリした灯が似合う。




アーケード街では塚田蒲鉾店(つかだのおでん)が賑わっていた。半世紀以上同じ場所で変わらず営業している。そのまま食べても旨いおでん種だ。


帰りは駅前からバスに乗り終点で降りた。ポケットから出したStudio Deluxe IIの針が宵闇に少し振れた。その露出計を作っていた工場がこの停留所の辺りに昔あったことを思い出した。住人は未だにその工場の名前に愛着があるのだろう。バスは行き先表示を都民農園セコニックから吉祥寺駅に変えて引き返していった。
(おわり)