2016年12月11日

戦中派財界人 品川正治氏の苦言(2007年)



日本経団連の元専務理事で財界の長老(品川正治氏)が、安倍政権(第一次)や日本経団連に「市場主義は万能ではない」と苦言をぶつけている。

『経団連が1月に発表した将来構想「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)、法人減税、消費税増税、教育改革、憲法改正。・・要望の集大成だが、品川氏は「おねだりするのは経済団体ではない、政治は市民社会のもの、企業社会のためでは国民の不信を招く。」今の財界は節度を忘れている。』と手厳しい。

『効率を最高価値にすれば、強い者は必ず勝ち、弱い者は負ける。強者はもっと自由を求め、弱い者は平等を求める。この亀裂は再チャレンジのような言葉ではいやされない。社会に亀裂ができるだろう。』

『日本と米国は価値観が違う。平和憲法を持ち、戦争をしない国と、絶えず戦争をする国の価値観が同じはずがない。』と断じる。

品川氏は三高時代、中国に出征した。戦闘部隊の二等兵だ。常に手投げ弾12発を身につけ、激戦に臨んだ。品川氏の右ひざには砲弾の破片が埋まっている。戦争で負傷した。

『戦争は兵隊の目で見る。将校ではない。政治は国民の目で見る。この信条はすべて戦争体験に根ざしているんだね。』

終戦から9ヶ月後、復員する船中で、新憲法の草案を新聞で読んだ。仲間と抱き合って泣いた。「二度と戦争をしないことを宣言した世界で唯一の憲法だ。」

品川氏は、生涯の「原点」を戦争体験の中で身に刻んだのだ。

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以上は、父の友人からの手記で父の遺品の中にあったもの。安倍第一次政権時(2007年)にすでに今を見通している。「戦争体験の中で身に刻んだ」「原点」を全て忘れたかのような経済界・政界の暴走は止まらない。

(おわり)

追記:
この友人の手記には併せて、雀鬼会・桜井章一の以下の言葉が添えられていた。中々意味深。
『強い人は、無理を越えたところで何かができ、それを楽しめる人です。貧乏、敵、困難、逆境、スポーツ、いろんな意味で強い人です。私が考える人格者というものは「強くて、温かくて、楽しい人」です。』
『普通の人では、常識では無理と思うところで、あっさり負けてしまう人です。もう無理と「自分で限界を」設定するからいけないのです。その「無理という壁」を乗り越えなければ「楽」は味わえないし、「強さ」は獲得できない。無理だと思うポイントを通り越したところに「勝負どころ」があるのですよ。』
『花が咲くには、何年もかかる。夢だけ追うような人間に「麻雀必勝法」が身につくはずはない。生き方がそのまま出てくる「勝負」というものなのです。』

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さしずめ、その「強い人」が安倍総理大臣であり経団連であり官僚天下りの特殊法人なのだろう。先人たちが歴史的に熟考を重ねても「無理という壁」は存在する。その「壁」自体、もう考えるのも面倒とばかりに、壊してしまう(解釈改憲、TPPなど)。歴史的継続性をばっさりと絶ってしまう。

たとえれば、ハードル競技でハードルを飛び越えずに倒して走ってゴールした自分たちを勝者とするに等しい。次の競技では他の者には倒せない程、ハードルを高くして、自分たちが走る時だけはパタパタと倒せるようにしておくというところだろう。「朕が国家なり、法律なり」と自ら言えば、その「朕」は忽ち「(自称)強い人」になる。いかなる場合も勝者であり「(自称)強い人」であり続ける。現に、安倍政権で通らない法案はない。通らない政治解釈もない。全てオーライである。

それは言わばクーデターであるが、その「朕」なる者たちを倒すことが真の「強い人」になることなのだろう。「私がそう解釈すれば、それが法律というものだ」は解釈改憲や政治資金支出に関する白紙領収書不問などからわかるように、安倍総理が言い放っているに等しい言葉である。

そんな自らに都合するルールとか常識を彼ら自身が世の中に輿論すればたちまち権力・権威になる。ネット社会は彼らが「輿論」を創作し拡散・一般化するにまさに好適である。そして、それらに無批判・無思考に唯々諾々と服従する「普通の人」がいる。しかし、「社会に亀裂ができるだろう」はその通りとなっている。

「麻雀必勝法」にあてはめると、壁を「乗り越える」という真っ当な努力もせず、卑怯にも「倒して」見かけ上「強い者」になっているのが安倍政権であろう。そんな自称「強い者」はいつか滅びる。「平家にあらずんば人にあらず・・(然れども)奢れる平家久しからず」だろう。

桜井氏はそのいくつもの著書の中で
『行き詰まると前方に道がないように思うのですが、逃げるのではなく、戻るという選択肢があることを忘れてならない。』『絶対というコトバを使えば、絶対という枠にしばられる。』

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「この道しかない」「絶対ないと断言したい」は安倍総理の口癖。負けても勝だと言い放つ大本営である。その悪しき賭け事のツケは我々が払うことになる。
posted by ihagee at 09:59| 憲法