2016年12月06日

安倍総理大臣、真珠湾慰霊へ 真の「和解」はその先にある



安倍総理大臣は今月26、27日に米ハワイを訪問し、日米首脳会談と真珠湾攻撃戦争犠牲者への慰霊(献花)を行う。


Breitbart誌上の写真を引用)

オバマ大統領の広島・平和記念公園訪問がそうであったように慰霊・献花(謝罪なき慰霊)となりそうである。自民党はオバマ大統領の献花という国政の結果を、一政党の政治活動成果に付け替え、直後に行われた参院選挙に向けて政治利用したことは記憶に新しい。原爆死没者慰霊碑を背景に両首脳が握手している写真は国政であって自民党の政治活動でないにもかかわらず、その写真を自党の選挙活動に用いようとしたことである。明らかに公職選挙法に抵触するので、さすがに自民党は選挙運動での採用を渋々諦めたが、この訪問を自党への世間一般の支持率向上の為にセットしたことは明白であった。結果として間接的に政治利用しその通り支持率はアップし選挙にも勝った。

同じシナリオで真珠湾への献花外交を年明けの解散総選挙へ向けた支持率アップの為にセットしているとみる向きも多い。マスコミの報道やネット上の反応をみると称賛一色に染まって、その他の安倍政権のここ数か月の失策・失態をスポイルするに十分な効果がすでに上がり始めているとも言える。国民の半数以上が反対していたカジノ法案もこの喧騒の裏でスッと衆院を通過するなど、人々の関心を逸らすことでもすでに成功を収めている。さらに開催前からすでに不調が報じられている日露首脳会談についても、安倍政権の失策を問う声をかき消す効果までも期待されている。この手のスピンが安倍政権はジツに上手である。

また、「安倍総理大臣が真珠湾訪問を決断したのは、トランプ次期政権でも日米同盟を強化する狙いがある」とマスコミはこぞって報じている。トランプ次期政権にも安倍総理の真珠湾訪問の効果は引き継がれるとの官邸サイドの憶測であろう。

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さて、そうなのだろうか?「引き継がれないかもしれない」との前提に立った論説が少ないのが不思議でならない。反対の場合も想定して初めて論説となるのに、トランプ当選・TPP米離脱など、このところのマスコミの観測は外れてばかりである。

ヒロシマ・ナガサキとパールハーバーは献花(慰霊)外交での日米間での返礼の範囲であってオバマ大統領としても任期最後にヒロシマで示したレガシィは、安倍総理が仕上げをする元々の約束(密約)があったのだろう。謝罪を伴わずに互いに欠けた心のピースを政治的に嵌め合うことについて、何事もウェットな日本側は概ね好意的に評価するだろうが、原爆投下の正当性をプラグマティックに主張する米国の保守層にとって、正当化の前提となる真珠湾奇襲への日本側の謝罪なき慰霊(おそらくそうなる)にどのように反応するか注視する必要がありそうだ。現政権との返礼関係だけで<和解>などと合点することが、オバマ大統領のレガシィを否定にかかっているトランプ次期政権でも通用するとは限らない。TPPに引き続き、献花もトランプ氏によって蔑ろにされる可能性がある。そうも観測すべきだろう

なぜならば、トランプ氏は自らの ツイッターで、日米首脳会談後の会見や広島でのオバマ大統領のスピーチを念頭に、「大統領は、日本滞在中に卑劣な真珠湾攻撃について議論しただろうか?多くのアメリカ人の命が失われたのに」と批判している。

さらに、トランプ次期政権の首席戦略官・上級顧問に就任予定のスティーブン・バノン氏は、彼のBreitbart誌上で原爆投下は「悪」ではなく、(日本帝国の)「悪の終結」と肯定評価すべきだと主張している。そして原爆投下を悪と認め、日本側の諸悪を看過するかのオバマ大統領の言葉を否定し、真珠湾奇襲、バターン死の行進、南京大虐殺、捕虜虐待(人体実験)などを挙げて、加害国として日本は明確に謝罪すべき点を述べている。バノン氏をブレーンとするトランプ次期大統領が、慰霊・献花なる返礼など「具体的な行動につながらないものは無意味」とばかり、安倍総理大臣に献花ではなく謝罪を以て<和解>することを求めてくる可能性もある。


Breitbart誌上の写真を引用 /
Bodies of victims along Qinhuai River out of Nanking’s west gate during Nanking Massacre)


Breitbart誌上の写真を引用 /
Chinese prisoners being buried alive by their Japanese captors outside the city of Nanking, November 1938)

政権の人気浮揚目的やオバマ大統領のレガシィに名を連ねたいとする功名心から政治カード程度に真珠湾攻撃戦争犠牲者への慰霊(献花)を用いようと考えているとすれば、「このカードは重すぎた」と安倍総理大臣は後で溜息をつくことになるかもしれない。その先に待ち構えるものを考えれば。

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福井新聞電子版(12月6日付)記事『 首相 真珠湾慰霊へ 真の「和解」はその先にある』では、こう指摘している。
『日本は旧日本軍による中国や韓国での戦争行為、さらに天皇陛下が慰霊の旅を続けてきたサイパンやフィリピンなどの激戦地も過去を引きずる。「真珠湾」だけで戦争のけじめをつけることはできない。』

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献花外交が政治カードとして通用するのはオバマ政権下の真珠湾までで、上述のようにトランプ次期政権ではそれすら「けじめ」と見なさない可能性がある。そうなると、安倍総理大臣に残されたカードは「謝罪外交」となる。

トランプ政権の要求に応じて、安倍総理が「謝罪」を前提とする真珠湾での<和解>の図式を見せざるを得なくなれば、当然中国・韓国から安倍総理大臣自身が<侵略戦争>をはっきりと認め、捕虜虐殺や従軍慰安婦について、明確に謝罪を行うことしか、『真の「和解」』はないと迫られることだろう。

すでに中国の各メディアでは「12月13日はもうすぐだ、真珠湾の前に南京に来てひざまずけ(中国政府は12月13日を南京事件の「国家哀悼日」に定める)」など、「献花」を超えて「謝罪」を前提の「けじめ」を求める声があふれている。

オバマ大統領の遺したヒロシマ=パールハーバーのレガシィがトランプ次期政権には「引き継がれないかもしれない」場合を安倍総理大臣は考えているのだろうか?私個人としては、オバマ大統領のレガシィやトランプ次期政権の意向とは関係なく、これを好機と捉えて安倍総理が自主的に中国韓国などにも<和解>と双方が認識できるようなしっかりとした謝罪を前提とする「けじめ」を示すことを願ってやまない。これは皇国の軍隊が中国本土で行なった中国民衆への日常的な差別・虐殺を肌身で知っていた我が父からの遺言である。(「殴ったことを忘れても、殴られたことは忘れないのが人間」)


ブラント西独首相「ワルシャワでの跪き」謝罪・1970年には訪問先のポーランドの首都ワルシャワで、ユダヤ人ゲットー跡地で跪いて献花し、ナチス・ドイツ時代のユダヤ人虐殺について謝罪の意を表した)


(シュミット西独首相・1977年 / アウシュヴィッツ)


(コール西独首相・1989年 / アウシュヴィッツ)


(メルケル独首相・2015年 / ダッハウ)

安倍.png
(安倍総理大臣・2013年 / 靖国)
靖国参拝は自立への一歩 米中韓の顔色をうかがう政治はもうたくさんだ(大野敏明)」産経新聞 11月28日電子版(産経新聞の狂気
〈終戦七十年を迎えて、わが国にようやくかかる風潮と決別し、事実に基く歴史認識を世界に示そうとする動きが生まれてきた。安倍首相の一連の言動にもその顕れは観取できる。何よりも歴史的事実に基づかない謝罪は、英霊の名誉を傷つける〉(日本会議が昨年発表した「終戦七十年にあたっての見解」)

・・ドイツは加害者として自ずと「けじめ」を続ける。将来世代まで罪と責任を負い続ける。第三帝国の軍人を英霊として奉ったりしない。誰に言われずとも自ら決め顔色をうかがう政治など微塵もない。加害者としての罪と責任から逃げない。「殴られた者」よりも「殴った者」の方が尊い(英霊)とするために「殴った覚えがない」などと卑怯に事実を歪曲しない。これが本当の国家の矜持・自立ということである。

(おわり)

追記:

安倍総理大臣は「これで『戦後』が完全に終わったと示したい。次の首相から、『真珠湾』は歴史の中の一コマにした方がいい」とニヤニヤとステーキを食いながら話したという。

「そもそも、安倍首相は真珠湾奇襲で日米開戦に至るまでの歴史的な流れを理解しているのでしょうか。根底には、米国が日本に対し、『ハルノート』で中国から撤退するよう突きつけてきたことがある。アジアにおける侵略戦争が、日米開戦の引き金になったのです。慰霊というならば、真珠湾の前に南京に行くべきではないでしょうか。来年は盧溝橋事件から80年。慰霊のために中国を訪問するには絶好の機会ですが、侵略戦争も南京大虐殺も認めたくない安倍首相には、絶対に無理でしょう。真珠湾にしても、国会で『ポツダム宣言を読んだことがない』と公言し、戦後レジームの転覆をもくろむ首相が、どんな心づもりで慰霊するというのか。トランプ次期大統領に尻尾を振りまくったことや、ロシアとの接近でオバマ大統領を怒らせてしまったから、レガシーづくりに協力してやろう。自分の支持率アップにもつながって一石二鳥だというような軽い気持ちなら、犠牲者を冒涜しています。」(政治評論家・本澤二郎氏)

「岸信介は、真珠湾攻撃の日米開戦当時、商工大臣として東条内閣の一員でした。嘘と詭弁で国民を騙し、無謀な戦争に突き進んでいった開戦責任は重い。そのDNAを思想的にも受け継ぐ安倍首相は、他の誰よりも、真珠湾慰問の資格がないはずです。安倍首相の政治手法というのは、話題になって一時的に支持率が上がれば、将来どうなっても知らないという態度で、手当たり次第に食い散らかしていく。真珠湾訪問もそうですが、場当たり外交や言行不一致を批判することもなく、劇場型政治に乗っかって騒ぐだけのメディアは、非常に罪深いと思います。」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
posted by ihagee at 18:14| 政治