2016年10月03日

「小さなアルバム」続き

昭和30年代に撮影された白黒ネガフィルムをネットオークションの売買で購入した件(拙稿「小さなアルバム」)、昨日、フィルムを撮影者に返却した。所詮、他所様の家族の記録である。利用許諾とか、とやかく訊ねてみるのもやめた。

以下の理由で、太宰の書いている通り「ひとの写真でも、大事に保存しているというようなことは無い。」と同じ結果となった。

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ネガフィルムは法的に著作物(著作権法2条1項1号)であり、撮影者は著作者となる。著作権と著作者人格権がネガフィルムにはある。そのフィルムの所有権は私にあった(返却前)。

著作権法第47条(美術の著作物等の原作品の所有者による展示)
「美術の著作物又は写真の著作物の原作品の所有者等は,その作品を公に展示することができる。」とある。従って、ネガフィルム(著作物の原作品)の所有者である私は、著作者の許諾なくネガフィルム自体を公に展示することは認められる。だからと言って原作品=ネガフィルムをそのまま展示したところで意味はない。プリントして展示することだろう。ネット空間上であれば、電子化してアップすることだろう。

つまり、ネガフィルムからプリントを作成したり、スキャンして電子情報に変換し、それら写真を誰かに見せたくなるのが心情というものである。昭和の写真であれば誰かと懐かしさを共有したいと思いたくもなる。「プリントを作成」「電子情報に変換」となると著作権法の「複製権(著作権法第21条)」を考慮する必要がある。

「複製権」について、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲は著作権法第30条〜47条に定められている限りである。その範囲外の許諾を得ない利用は著作権者の所有する「複製権」の侵害となる。

「誰かと」は、ネット時代であればインターネット空間となる。パスワードを設定して友人だけに見せれば「誰でも」にならないから構わないとか、画像保存先としてネット上のサーバーを個人的に利用するだけで非公開設定しているから「誰にも」見られないから大丈夫だと安易に考えがちである。

著作権法上では、著作権者の許諾なく、電子化した画像をネット上に上げること自体も「公衆送信権(著作権法第23条1項)」及び「送信可能化権(同法23条1項)」の侵害となる。「見られる状態」か否かは関係なく、アップロード(送信)したか否かが問題となる。

著作権者が判明し、それら権利について著作権者から許諾があって初めてブログに掲載することができるという訳である。著作権者が判らない場合は、許諾さえ得られないということになる。ということは「拾い物」は原則、拾った状態でしか所有できないということである。

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ネットでよくみかける「拾い物画像」。「拾った」とは「ちょっと拝借した」の意味。著作権者から許諾を得た状態を「拾った」とは言わない。だから、「拾い物画像」とは著作権法違反である可能性が高い。ご用心。

撮影者への返却に一言添えた。「何かの手違いでネガフィルムを失くされたものと思料いたします。ネガフィルムは資産です。差し出がましいようですが、今後は遺失せぬよう除湿庫などで大切に保管することをお勧めします。」

(おわり)
posted by ihagee at 00:00| 古写真