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銀座の一等地でもプランタン、松坂屋といったかつての銀座の顔が消えたことは記憶に新しい。百貨店なる、そこへ出かければ何でも現物(百貨)を見せる・見られる時代は終わったようだ。

(東京駅皇居前・Exakta VX1000, Schneider-Kreuznach Tele-xenar 135mm, Fujicolor 100)
「店は見せ」なる言葉がかつてあった。品物はお客さまが先ず手に取って見て貰うもの、その品数を多くして見せる場を提供するのが百貨店であった。食品や日用雑貨品は近所の商店で買うが、服飾宝飾など体に合わせてみなければわからないもの・値のはるもの程、手に取り見比べて五感で良し悪しを判断しない限りは買わないという感覚がかつてあった。
私の子供時代は父母と銀座の「百貨店に出かける」ともあれば、親子共々、それなりに街着(よそぎ)でかしこまったものだった。三越や松坂屋といった老舗百貨店の包装紙での歳暮などの贈答は、格式を示すものだった。
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そんなハレの場としての百貨店が、いつしかファミリーの溜まり場「デパート」になり、ネット時代の今は現物をチラッと見するだけの商品展示場になってしまった。売り場からスマホで他所にネット注文する客の姿は今は普通である。自分の五感よりもネットの口コミを信用し、百貨店との信用を含めての値段は馬鹿らしいとばかりに、価格コム的に安ければ得とする消費者ばかりになって、本来の「店は見せ」てそこで客に信用買いして貰う百貨店の使命は終わったのかもしれない。百貨店ばかりでなく、日用品も高級品もひと所に集めてアミューズメント化した大型商業施設にも陰りが見えている。これすらもアマゾンなどのネットの仮想店舗に客を奪われつつある。
ファミレスも同様だ。和洋中何でも取り揃えていかなる世代のお客にも対応可能な業態は今では専門店に客を取られてしまっている。
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五輪に「百貨店」が重なって見える。
五輪よりも、競技種目毎の国際大会での実績の方がアスリートにとっては戦績にも収入にもなる時代である。国旗よりもスポンサー企業のロゴを背負って戦うトップアスリートばかりである。円谷選手のように国旗の重さに命を絶つような重さは今は五輪にはない(国旗に殉じないことは蓋し幸いなことだ)。
五輪参加という名誉よりも、トーナメント(メジャー)の実績を取る例は、リオ五輪でのゴルフ、野球、サッカーなどのトップ選手に顕著となっている。サッカーワールドカップは明らかに五輪よりも格が上である。集客力も五輪の比ではない。
五輪に参加するという「名誉」よりも、トーナメントでの「実利」を取る傾向はアスリートだけでなく、競技団体にまで波及しつつある。そうなれば、五輪のタイトルだけを冠した競技団体毎の国際大会を場所を決めて分散開催する(専門店化)する時代も遠からず来るかもしれない。
今の時代、アスリートさえ場合によっては二の次にする「名誉」そして「選手が一同集まって競技する」というクーベルタン時代からの五輪の精神は、「格式」と「何でも現物(百貨)を見せる」の「百貨店」と重なって見える。
時代はもはやそうではない。3兆円を下らない費用を一開催都市の市民が支出する「百貨店」的五輪に将来はあるのだろうか?
(おわり)
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