2016年08月22日

Voigtländer Superb 顛末記 - その1

Voigtländer Superbについては、先のブログ記事に書いた。

そして、記事を書いて程なくして、とあるところからVoigtländer Superb(福耳の前期型)を入手することができた。

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このSuperbは1933年オーストリア製で、ベルリン・オリンピックよりも前、まさに歴史的カメラである。ナチスも戦争もこのレンズが捉えていたのかもしれない。このカメラが生まれて数年後のベルリンの景色がYouTubeにアップされているがそんな時代感から生まれたTLRであろう。ここに映し出されている景色のほとんどが戦争によって廃墟と化した。





ピントリングと連動してビューレンズが繰り出してパララックスを補正するが異様にヘリコイドが重く粘る。シャッターは全速切れ絞りも問題はない。エタノールを綿棒の先につけてビューレンズ・テイクレンズ(テイクレンズは4枚構成のスコパー)を清掃したらかなり綺麗になった。

このカメラ、以前の持ち主が色々と手を入れた跡がある。たとえば、テイクレンズ、正面から見て右側のシャッターチャージが親指がしっかりかかる真鍮製のレバーに替えてあり、

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左側のシャッターレバーも指掛りが特殊な形状になっている。指をかけてレバーを引き下ろすと外方向に金具の先端が開いて掛りが良い仕組みになっている。レバー周りの変更は他に例を見ないので、このカメラだけのあつらえなのだろう。

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フィルム室も通常の全面のプレッシャープレートではなく、フィルムの端から抑え込むプレートに交換されていた。このプレートも特別あつらえなのだろう。さらに内部はレンズの後玉の周囲まで丹念に植毛紙が貼り込んである。

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ミラーとスクリーン(単なる磨りガラス)は交換されていないようなので、かなり暗く見づらい。そこで、eBayでsuperb用の表面鏡を入手した(sellerはmarty1107 迅速丁寧な対応で信頼できる売り手である)。1.25mmの厚さですでにカットしてある。Voigtländer Superbは前期型(福耳タイプ)と後期型では先端の台形部分の長手方向の長さが僅かに違うのでオーダーする際はどちらの型であるか指定する必要がある。

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Rolleiflex SL66用のフレネルとセンタープリズムが付いた純正のスクリーンで余ったものが一枚あった(元々小傷があって使っていなかったもの)。オリジナルのスクリーンはノギスで測ると厚さ1.6mm で縦横各55.9mmだったので、そのサイズにアクリル板用カッターで切り出した。

ミラーとスクリーンの交換までは難なく終えることができた。ミラーとスクリーンへのアクセスの仕方と交換手順については次回ブログ記事に掲載。

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(交換後のスクリーンの見え方・ピントグラス越し・明るい部分がスクリーンのセンタープリズム。その周辺が暗く見えるが実際はもっと明るい。)

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メッキ部分が所々腐食していたので、ハセガワのミラーフィニッシュを適用してみた。スカイライトフードの縁は綺麗になった。これはかなり効果的。純正のフードとYフィルター(いずれも被せ式)を装着してみた。先のブログ記事に書いた通り、カメラが途端にクナやアーベントロートのようなごっついゲルマン顔になった。インパクトがある。

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写真をみて判るかもしれないが、ピントレバーなど部品を幾つか外した状態のままにしてある。ついつい出来心である部分に手を出したばかりに大事故を起こしてしまった。スクリーンといえども宿敵Rolleiを移植してSuperbの恨みを買ったからかもしれない。それも次回以降掲載。1933年生まれの老体カメラにひどい仕打ちをしてしまったと後悔しきり。

(おわり)


posted by ihagee at 19:27| Voigtländer Superb