2016年05月30日

いつまでも「うそつきロボット」で良いのか(原発事故なる国家の宿痾(治らない病))

鉄腕アトムに「うそをつきロボット」という話があるそうだ。
それは、
《うそばかりをつくロボット。 しかしそれはガン患者の母親の看病をさせようと思ったある科学者が病名を明かさせないようにするための苦肉の策だった。アトムに言われてやはり嘘はよくないと再び改造をする。そこで火事になってしまい、ロボットがそれを知らせに走るが普段うそをついていたロボットゆえに誰もその事を信じない。 そればかりか彼を皆で叩き壊してしまう。 火事はアトムの活躍で事無きを得る。そして自分を看病してくれたロボットのゆくえを問う母親にアトムは「ここにいる」と嘘をつくのだった。》

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NHKスペシャル「廃炉への道2016・核燃料デブリ迫られる決断」で「福島第一原子力発電所でメルトダウンした3つの原子炉を同時に「廃炉」にするスケジュール決定(即ち、デブリをどう取り出すか)の大方針を決めるまであと1年。決断の時が迫っている。」と締めくくる。

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そもそも、どこにあるかもわからないデブリ、まとまって存在しているかもわからず、地中深くコロイド状に散らばっているかもしれない超高放射線核物質を取り出すことなど真面目に考えたら「不可能」である。

おそらく「アンダーコントロール」とこの国の自称最高責任者が国際社会に宣言した手前、現場は「可能」と言い続けるしかないのだろう。

炉心真下に決死の作業でトンネルを掘り、コンクリートを流し込んで溶融した核燃料の地中へのメルトアウトを辛うじて食い止めたチェルノブイリ事故原発ですら、たった一基の石棺を維持する(現状維持)だけでも数百年のオーダーで技術的困難が待ち受けているというのに、ダダ漏れの福島事故原発三基にその先の「廃炉」の技術を語ることなど到底「できない」話である。

技術的課題というものは、事故発生時にすでに消滅したことに我々は素直に向き合うしかない。「技術的に解決できる」と言ってあたかも技術的課題があるかのように繕うことは嘘を言い続けることに他ならない。技術的課題というありもしない課題と共にその未来永劫果たせない責任を将来世代につけ送りすることに他ならない。その先には「嘆きの壁」ならぬどん詰まり(投了)が待ち受けているだけである。将来とてつもない被害となっても当事者の世代の責任にならないようにただひたすら嘘をついて時間を稼いでいるのである。嘘と時間稼ぎは今に始まったことではない。過去の公害病(水俣病など)・薬害事件(薬害エイズ)などこの国では枚挙に遑がない。

そのように嘘をつかれて、後々どれだけ多くの人々が苦しむことになるのか我々は痛いほど知っている筈である。事実が判明した時点で直ちに防護的措置を講じていれば被害は広がらなかった筈である

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事故原発に由来する放射性物質の環境への曝露による被曝の実態はチェルノブイリ事故原発では「100万人以上の死亡者」と報告されている(2009年にニューヨーク科学アカデミーから出版された『チェルノブイリ大惨事、人と環境に与える影響』)。

チェルノブイリ事故の場合、放射性物質の環境への曝露は専ら爆発時(一基)の大気中へのものであったが、福島事故原発の場合は地中・地位水脈へ間断なく漏れ出している(三基)ことは判っている。つまり我々の生活も含む環境系に完全に事故原発とその膨大な放射性物質(2011年8月時点ですでにセシウム137だけでも広島型原爆の168個分が大気中に放出されその22%が陸地に降り積もったことが判っている)が取り込まれてしまっている。

そんな状況で「(廃炉への)技術」をさもあるかの如く語ったり「笑っていれば放射能は憑りつかない」とか言って「夢や希望」をばら撒くことは、嘘をつき続ける「うそつきロボット」でしかない。

嘘で誤魔化せない・笑うに笑えない程の過酷な現実しか、原子力発電所の事故は示していない。それが「核=原子力」の正体である。人間の気持ちなど寸分も斟酌することなく放射性物質は勝手に挙動し数万年の半減期という人類の時間のスケールを超えて汚染は続く。「心のケア」とか「風評」とか人間の側の心の持ちようでどうにかなる相手でもない。

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アトムの話では嘘をつかないように改造されたロボットは人々によって叩き壊されてしまう。しかしそのロボットは「火事」という現実を知らせていた。

嘘をつき続け、技術的に廃炉が可能かのように見せかけつつ事故原発周辺に人々を呼び戻して生活させるということは、アトムの話の「ここにいる」と同じ人間の気持ちを利用して「ここ」で事故原発が与える放射線の影響を受け入れさせることでしかない。

アトムに出てくるような一人のガン患者の話ではなく、数万人単位の人々への嘘がその先数千人単位の被曝による死をそうと悟られずに黙認することは犯罪に等しい。正直にモノを言う人々が嘘をつき続ける人々によって「風評被害を広めた」と叩き壊されるのも同じである。

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事故原発に対してありもしない技術課題にかかわる時間があるなら、被曝の事実を直視・確認し補償と放射線防護にこそ全力を振り向けるべきであろう。嘘をついて後者を等閑にしてはならない。

かの冷酷非情・人権蹂躙の代名詞だった旧ソ連邦ですら、事故後5年でチェルノブイリ法を制定し、原発事故と放射線被曝を国家の宿痾(治らない病)と位置付け、放射線防護措置と補償をいかに行うか等、社会倫理的に原発事故に向き合うことを最大の課題としたのである。

わが国では、「福島の影響は及ばない」と不都合に蓋をするばかりか、事故原発を廃炉技術のメッカにすべきなどと嘘の上に虚飾を重ねて、その成果がこれも嘘に塗れた2020東京五輪というのだから目も当てられない。

事故原発をこの国の宿痾(治らない病)と位置付け、あたかも治療下にあるかの如くの「アンダーコントロール」なる嘘とその上に重ねる国家的虚飾にこそ終止符を打つべきである。

即ち、現状維持できるかどうかも危いという認識を国際社会に示し(「アンダーコントロール」で招致した五輪は返上)、せめて環境への放射性物質の放出を少しでも食い止める為の知見を国際社会に求めるのが筋であろう。食品や水・土壌の中に含まれる放射能の総量(ベクレル)の許容摂取基準値についても、ウクライナの基準値を参考に可能な限り低い値に近づけるように食品流通段階での綿密な検査(aI(Tl)シンチレーションスペクトロメータ及びシンチレーションサーベイメータ)と放射線防護の為の意識を高める必要がある。「そんなことをしていたら手間や時間がかかって仕方ない」、「サンプル検査とはいえ常に一定量がミンチにされたらもう使えない」などと、生産者側・流通側の都合を優先しておざなりにベルトコンベヤ式のイメージングベースの測定器で粗く検査をすることなど論外である。誤魔化して済む話ではない。ウクライナではどんなに手間と時間がかかろうと、シンチレーションで検査を行う。流通側の都合や経済性を天秤にかけることをしない。

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息を吐くが如く嘘をつくというロボットならぬ、自称この国の「最高責任者」の国家的虚飾のツケを払うのは我々国民であれば、一刻も早く嘘と虚飾をやめさせなければならない。「アベノミクス」も然りである。

(おわり)
posted by ihagee at 18:25| 原発