2019年01月12日

違和感が現実になる




JOC竹田会長 五輪招致で汚職に関与容疑・フランスで(刑事起訴に向けた)捜査開始とフランス・ルモンド紙が速報。司法に政治は不介入が原則だが、ゴーン氏逮捕勾留と絡んで、捜査当局や司直の頭ごなしに日仏首脳間で水面下の政治決着が行われる可能性もある。ただしその場合、双方痛み分けにはならないだろう。フランスの司法当局は証拠不十分として竹田会長を不起訴にすれば済むが、日本の司法当局はゴーン氏を起訴(追起訴)した。誤認逮捕(不当な身柄拘束)を認め・起訴取り消しとするという幕引きは、翻って当局の存在理由を問われることになる。容疑者を罪人扱いし長期勾留している東京地検(特捜部)の人質司法ぶりと、推定無罪なる法治社会の原則に立たない司法制度が炙り出され、延いては我が国の国際的信用にまで及ぶ。このような状況を受けてスポンサー企業が降りてしまえば、オリンピック開催どころでなくなるかもしれない。

クーベルタン以来、特権階級・貴族のサロンであり続けたIOCであれば、そこら辺のサラリーマンならいざ知らず、貴族仲間であるJOC会長のサロンの面汚し(この先起訴されれば)には黙っていられないだろう。開催時期や開催場所の変更など、大会運営の見直しを検討するかもしれない。

今後の成り行きを我々もしっかり監視したい。

以下、過去ブログ記事(2016年5月掲載)を再掲載する。記事の内容はその当時に判明したことである(なお、2.4億円(裏金)や都知事=舛添前都知事などは当時の儘記載する)。当時感じた様々な違和感が2019年を迎えて一挙に悪い方向に現実化し始めた。波乱の一年になるだろう。

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2020年東京五輪招致に関連する裏金(2.4億円)の疑惑が浮上した。ロシア陸連のドーピング疑惑を端緒としてまさに驚天動地の展開となった。裏金を差し出したのが招致委員会だったのか、そのエージェント(電通)だったのかは未だ不明だが、招致の為の買収を目的とした裏金であり、その金の出先は日本・東京と国際的に報じられている。そして仏の検察当局が捜査を開始しIOC実力者の金銭授受の事実を確認したようである。疑惑が犯罪として立件される可能性もあり、事と次第に拠っては2020年の東京開催中止をIOCは決断するかもしれない(海外の一部のメディアでは、東京に代わってロンドンでの開催の可能性を早々と報じている。)そうならないとしても、このまま何の自省も道義的責任も示さずに東京都が五輪を開催することについて国際世論は黙っていないだろう。嘗てのモスクワ五輪のように参加を見送る国も現れるかもしれない。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は「招致委員会はすでに解散しており組織委員会とは関係ない。」とさっそく頬かむりを決め込み、電通も「知らない」と言い、菅官房長はいつもの通り最初から全否定である。予断を許さない事態であると国際社会が認識し始めている中で、「関係ない」「知らない」と予断を国際社会に振り撒くことのダメージを彼らは一切考えていない。予断を許さない原発事故に対して「アンダーコントロール」と予断を振り撒くだけ振り撒いて招致した五輪である。何から何まで予断尽くしの五輪ゆえ、その通り、現実は不祥事・不手際・トラブルのオンパレードになっている。そしてここにきて開催そのものに赤信号が灯りだした。折悪しく、都知事までがマネー・スキャンダルの渦中にありまさに内憂外患である。三年前の私的な家族旅行すら記憶になく会計責任者に全ての罪を被せて済ませ、「東京を世界一の都市にするんだ。東京五輪、パラリンピックを史上最高の大会にするんだと全力を挙げ努力していく」などと居直る。この人自体が赤信号である。こうなると東京五輪の新たなロゴもやはり黒い喪章に見えてきた。

これらの疑惑報を耳にして尚も発せられる「東京を世界一の都市にするんだ。」の言葉に、開催決定のあの瞬間に感じた強烈な違和感が蘇ってきた。東日本大震災、原発事故の只中、多くの国民が同朋を襲った未曾有の惨禍の喪に服している中、この国のシルクのスーツをまとった中枢の人びとが「おもてなし」なる宴を準備し狂喜乱舞するあの様である。首を垂れ途方に暮れる人々と歓喜に沸き返り万歳三唱をする人々がテレビでは同じフレームの中に映しだされていた。3百キロ程度しか離れていない場所同士で、こんな天と地ほどの落差があって良いのかとどうにも理解し難かった。この時も「東京を世界一の都市にする。」と安倍首相が叫んでいた。

「被災地の為にも元気と希望を送らなくてはならない。だから五輪が必要だ」と言う。都会人の地方の人びとに対する上から目線の傲岸不遜さがその言葉の端々から鼻につく。<おもてなし>と美女が色目を遣う先は外国人観光客であって被災地の人々ではない。たとえ大震災以前から招致活動が続いていたにせよ、物事には優先すべき順序というものがあり中止するのが理の当然だと思っていた。この国の持てる資源を先ずは被災地と原発事故に振り向けるのが当たり前だと思っていた。それが首都再開発・観光客誘致という五輪にかこつけた巨大な功利に化けてしまったのである。その通り、ヒト・モノ・カネの大方が東京に集約し、虎の門界隈は巨大なビル街に生まれ変わり、なおも東京は再開発の槌音の只中である。あたかも東京都民だけが国民であり、東京都だけが良ければの「世界一」発想である。原発事故も翻れば、都民の電力の為に原発なる危険を地方に押し付けその結果福島県民が犠牲になったのに、「(原発事故の)影響は届かない(竹田招致委員会理事長・当時)」で招致した五輪でもある。どこまでも東京のご都合主義が優先する。そのことへの強烈な違和感である。

私ぐらいの年齢になると(シニア)、これは変だと感じたことは、いずれ悪い方向で現実化することが多い。それだけある程度、諸事を洞察する力が備わってくるものである。そして安倍政権になってからその政策のどれもが違和感を覚えるようになった。違和感どころか吐き気がすると言っていた私の父母も先年亡くなった。その次の我々の世代がまともな感性と理性を働かせる番である。違和感を見逃しそのまま現実にしてはならないのである。

追記:

予断を許さない事態であるとようやく認識したのか、菅官房長官、遠藤五輪相、安倍首相がこぞって「事実関係を確認する」と声明を出した。仏の司直の手にあると報じられた当初からそう言っておけば良かったのである。

都知事が公金を私的に流用していた疑惑について、とってつけたような理屈を後から繰り出して煙に巻こうと必死であるが、五輪招致委員会の理事長であった竹田恒和氏も「(裏金とされているカネは)業務に対するコンサルタント料で問題があるとは思っていない。招致活動はフェアに行ってきたと確信している」とこれもまたとってつけたような理屈を後から繰り出している。今朝まで知らぬ存ぜぬとシラを切っていた。
招致委はコンサルタント会社を「大変実績のある代理店で、アジア中東の情報分析のエキスパート」と評している。実績のあるとするコンサルタント会社の所在地は以下の写真の公営住宅である。ここに巨額な報酬を得て実績がありエキスパートと評価されるような会社があると信じる人はいないだろう。さらに、シンガポールの法人登記簿によると、2006年に設立された同社は、招致委から送金を受けた翌2014年7月に閉鎖されている。と報じられている。竹田氏が実績のある代理店というこのコンサルト会社のことは、外電ではsingapore shell company(ペーパーカンパニー)と報じられている。ペーパーカンパニーが仕事をする筈はない。

コンサルタント会社

ベタベタと政治とカネが纏わりつく五輪。開催地決定過程の不透明さ、開催地が決まる度に商業主義が加速し公益性が損なわれていく五輪。権力者と富める者の為だけの五輪に対してもう五輪など要らないという声も大きくなっている。これも違和感の発露である。先の五輪の汗と涙が染み込んだ1964年のメインスタジアムは邪魔だとあっさり壊してしまうことに代表されるように、刻まれた歴史を都合に任せて破壊・修正することに対する違和感である。

スポーツを行うという本来の目的に立ち返るなら、五輪発祥の地、今は財政危機にあるギリシャに五輪の権益を返し、各国が持ち回りで支援してギリシャの地で恒久的に開催することで良いのではないだろうか。ギリシャにとっても最大の既得権益となって、その収益で財政再建が可能になるやもしれぬ。

万一、IOCが犯罪と認定して東京五輪の開催中止を決定したら、東京都だけではなく日本の国際的名誉は失墜するだろう。このまま不名誉な現実を待つよりも、そもそもの話に立ち返って優先すべきことを優先し、ここは自らの決断で開催を返上し、代わってギリシャでの恒久開催を国際社会に提案すれば、多くの諸国民に共通する商業五輪への違和感が解消され、僅かでもその名誉は保たれるだろう。

再追伸:
外電によると、コンサルタントとされるタン氏はIOC実力者ディアク氏の息子(この息子は国際陸連のコンサルタント)と極めて近い関係にあり、招致委員会が巨額の送金をタン氏の口座(口座のある銀行はBlack Tidingsという秘密口座でありディアク氏の息子が関係する様々な買収工作に用いられている)に行った直後、その息子がパリで相当額の宝飾品を買っている(マネーロンダリング)事実まで仏検察当局は掴んでおり、タン氏を迂回した裏金の疑惑を報じている。国際陸連の会長を務めたディアク氏は、IOC委員として五輪開催都市決定に強い影響力を及ぼし得る立場にあった。したがって、ディアク氏が五輪開催都市決定に関して、その息子とともに具体的にどのような影響を与えたかも焦点となる。事実、国際陸連への協賛金(約4億4000万円)の支払いを拒んだトルコは開催都市決定で東京に敗れている。

ロシア陸連のドーピング疑惑のもみ消し工作に国際陸連のディアク会長(当時)が関わる汚職捜査が端緒となってタン氏の秘密口座の洗い出しが行われたようだ。その裏金のルート上にタン氏が存在し、表と裏をつなぐキーマンと仏検察当局は睨んでいるようである。タン氏のそのような役割を暗に期待して招致委員会が「報酬」を支払ったのかが焦点となるようだ。五輪招致活動で開催候補都市が海外のコンサルタント会社を用いることは一般的である。コンサルタント会社には元IOC委員らが所属するケースが多く、プレゼンテーションで何をアピールすべきかや、ロビー活動をどう行うべきかといったアドバイスを受ける。IOCが正当なコンサルタント業務(つまり、コンサルタント会社への金銭の支払いが正当なものである)と認めるのはそのようなコンサルタント会社との間でコンサルタント契約書が存在する場合だけであり、竹田招致委理事長(当時)は契約書がどこにあるのかわからないと述べている。「フェア」と竹田氏は言うが、汚職のルート上にあり且つ実態のよく分からない会社、その会社との契約書の在り処さえわからない状況を「フェア」と言うにはあまりに無理がある。裏金との疑惑は契約書の不存在にもかかっている。

再々追伸:
2020年東京五輪招致に関連する裏金(2.4億円)の買収疑惑。ロシア陸上選手のドーピング疑惑のもみ消し工作(ディアク国際陸連(前)会長関与)について世界反ドーピング機関(WADA)の調査委員会の調査報告書脚註で、五輪候補都市(トルコ・イスタンブール)が協賛金を国際陸連に拠出することを拒否した為に、ディアク国際陸連(前)会長の支持を失いトルコは選ばれず、拠出した日本・東京が選ばれたという、数行の記載から国際陸連疑惑からIOC疑惑へと飛び火した結果である(今年の1月)。脚註の僅かな言及が2020東京五輪への疑惑に発展するかもしれないと察知し、誰よりも早く報じていたジャーナリストがいた。これこそ真っ当なジャーナリズムである。

以下参照:
買われた?東京五輪 ー 電通への質問状1
買われた?東京五輪 ー 電通への質問状2
買われた? 東京五輪6――メディアの遮眼帯

(おわり)
posted by ihagee at 09:23| 東京オリンピック