戦争に至る階段を一度は登った世代の人々が周りからいなくなりつつある。敗戦時二十歳であった父も昨年去った。その世代の時代に対する嗅覚は鋭いものがあった。父もその友人達も国連平和維持活動PKO法によって自衛隊の海外派遣が可能となった1992年の時点ですでに現在の階段を予見して警鐘を鳴らしていた。
その通り、日米安保条約新ガイドライン(1997)、周辺事態法(1999)、テロ対策特別措置法(2001)、イラク復興支援特別措置法・サマワへ陸自派遣(2003)、武力攻撃事態法(2003)、有事立法・国民保護法等7法案(2004)、防衛大綱・24兆2400億円の新中期防衛計画・武器輸出三原則緩和(2004-2005)、自民新憲法草案大綱発表(2004)とあれよあれよと階段を登りだした。そしてその背後で、教育基本法を変えて愛国心昂揚を図り、靖国神社の閣僚参拝が常態化し、君が代・日の丸の強制と処分、住民基本台帳から自衛隊員を募り体験入隊させ・・と空気が変わってきた。
そして、安倍政権になって、特定秘密保護法、集団的自衛権の海外での行使、報道・表現の自由への脅し、解釈改憲(憲法泥棒)と上段にまで登りつめているのである。そのどれもが、いつかきた道・戦争への道(以下)と符合する。それを知る世代が少なくなったことを見計らってである。
・治安警察法公布(1900)
・特高警察設置(1911)
・治安維持法(1925)
・治安維持法改正・最高刑死刑(1928)
・満州事変(1931)
・上海事変(1932)
・内務省検閲制度厳重化(1933)
・映画統制機関設置(1935)
・思想犯保護監察法(1936)
・2・26事件(1936)
・軍機保護法改悪・支那事変・労働総同盟ストライキ絶滅宣言(1937)
・日独伊防共協定(1937)
・国家総動員法(1938)
・軍用資源秘密保護法(1939)
・政党解散・大政翼賛会・日独伊防共同盟(1940)
・出版物発禁止・金強制買上・劇団解散命令・石炭配給制(1940)
・真珠湾攻撃・太平洋戦争突入・国防保安法・ゾルゲ事件・予防拘禁手続令(1941)
・食塩・味噌・正油通帳配給制・衣料キップ制、学徒出陣令、婦人の一日入営、大増税、軍費捻出の為の厚生年金保法成立(1942)
・戦時行政特別法(総理大臣の権限強化)、金属供出、工場就業時間制限廃止、中学生勤労動員、軍事教育全面強化(1943)
・三菱重工など150社軍需工場指定(680社に広がる)、女子挺身隊動員、17才まで兵役編入、無職未婚女子動員体制、建築物強制疎開命令(1944)
・広島・長崎原爆投下、敗戦(1945)
・国防保安法等廃止に関する勅令第568号により、治安維持法、軍機保護法、国防保安法など国民主権、基本的人権、自由と民主主義を阻害する法律を廃止(1945)
追記:<立憲主義へのレッドカード><地獄の一丁目>と懸念されている「緊急事態条項」は要注意である。
欧米のジャーナリストでさえ、これはどこか中南米の非民主国家でしかありえないと驚く「緊急事態条項」が自民の改憲案に組み込まれている。その<隠された動機>を東京大学の石川健治教授(憲法学)は指摘する。(以下弁護士ドットコムニュースからの転載)
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(前略)
自民党の改憲案などに盛り込まれている「緊急事態条項」もテーマの一つとなった。緊急事態条項とは、大災害などが起きたときに政府に権限を集中させるというものだ。非常時に強力なリーダーシップを期待できる反面、「独裁をまねく」といった批判も根強い。石川教授によると、緊急事態条項をもうける場合でも、その発動がみとめられるのは、例外状態に限られる。だが、戦前の日本が日中戦争から太平洋戦争に突き進んだように「危機が常態化してしまう」ことも起きりうるという。
石川教授は「コントロールのない権力が、危機の常態化を理由として、内側から立憲主義をむしばんでいったり、立憲主義的な統制がやぶれていくということを過去の歴史上、繰り返してきた。緊急事態はたしかにあるが、すべての手段を正当化するわけではない。いかにして確実にコントロールできるのかが問題だ」と述べ、コントロール機関としての憲法裁判所の必要性も付け加えた。
さらに石川教授は、現在検討されている緊急事態条項について「目的と手段がつじつまがあわない」と批判。「つじつまがあわないのは、結局、本当の目的ではないからだ。災害対策は必要だが、目的と手段が整合していない。そこには、隠された動機があると考えるべきだ」と警鐘を鳴らしていた。
(おわり)
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