2015年11月25日

8mmフィルムスキャナー 待望論(続き)

8ミリフィルムがスキャンできる唯一のコンシューマ向け製品としてWolverine社のフィルムスキャナー(Wolverine Super F2D)を、本ブログ記事では取り上げてきた。

安価なコンシューマ向け製品としての立ち位置は、35mmフィルム(ネガ)やスライド(ポジ)のスキャナーとしては他社競合品がいくらでも存在するので月並みであるが、こと8mmフィルムに限れば、この製品しかない。公称スペックは、1/1.8" inch 5 mega pixel CMOS、Scan Quality 1,800 dpi、Data Conversion 10 bits per color channelで、接眼レンズはF2.0の4枚組ガラスのLED光源である。ハイスペックにすればそれだけ筐体が大きくなったりスキャンに時間がかかったりするので、このスペックが設計上の妥協点なのだろう。

Wolverine社の想定する8mmフィルムスキャンはおそらく、フィルムの任意のコマから静止画像を取得することが主目的であって、静止画像を合成して動画にすることは副次的目的だろう。副次的とは言え、動画にできることまでは同社のプロモーションビデオで説明があるので、あとはユーザのやる気だけである。スキャンに1コマ5秒、フィルムを手繰って次のコマを位置決めするのに5秒、つまり、1コマ10秒程度の作業を根気よく繰り返すことになる。映像として1分程の長さの8mmフィルムはコマ数にして1440コマ(24コマ/秒)なので、約240分(4時間)の作業である。今どきのビデオと違って昔はフィルムを無駄撮りしていなかったので、1分程の長さであっても想い出が詰まった箇所を探すのは容易だろう。その部分だけでもデジタル化できれば意味がある作業だと思う。どの範囲を作業するかは、事前に手回しのフィルム編集機(ヤフオクで中古品が安く手に入る)で当たりをつけておくと良いかもしれない。

そのようにして、部分的にWolverine Super F2Dで取得した静止画像を後処理にて動画に合成した事例を以下紹介したい。




(これは私がWolverine Super F2Dで試した例・再掲)


(これはWolverine Super F2Dで35mmキネフィルムをデジタル映像化した例)

先の記事でも述べたように、コマ位置は手で決めてスキャンするので微妙にスキャンしたフレームの範囲が前後にずれる。そのまま取得して静止画像を繋げて合成すると(GoogleのPiscaやiMovieで合成可能)、上下に細かくぶれが生じる。しかし、YouTube上のスタビライズ機能を用いれば不自然感はあるがこのぶれは軽減される。YouTubeのスタビライズ機能は被写体にかかる。つまり、ビデオカメラの撮影中の手振れをソフトウェアで補正するためのものであって、当然ながら、8mmフィルムから取得した静止画像の前後ブレを補正するものではない。

8mmフィルムからWolverine Super F2Dを用いて取得した静止画像ではパーフォレーション(孔)が写り込むので、孔の位置からフレームの位置を割り出してコマ単位にソフトウェアでトリミングしてくれれば、結果としてスタビライズされる。その意味で8mmフィルムに特化したフレームの切り出し機能をネットの動画サイト上で提供してくれれば、多少位置決めが不確かな静止画像であっても構わないということになるだろう。

イメージ1608.jpg
(パーフォレーションとフレームとの位置関係)

さて、本来ならフィルムを長年売りまくった富士フィルム株式会社が企業責任として、コンシューマ向けの8mmフィルムスキャナーと前回の記事に書いたような、ネット上の編集(上述のフレーム切り出し機能を含めて)・アーカイブサービスをワンストップで提供すべきと思うが、富士フィルムの<フィルム>がもはや、遺伝子工学や生物医薬の媒体としてのフィルムの意味に代わってしまった同社にとって、いまさら8mmフィルムに事業の光を当てることはないだろう。そのようにコンシューマ側に必要性がありそれなりに需要があっても、企業の腰が重い場合は、クラウド・ファンディング形式で共感する仲間がその夢を実現するやり方がある。今の時代、その方が手っ取り早い。その成功例がiPhone(内蔵のカメラ)を用いた光学35mmフィルムのスキャナー、Lomographyである。そしてそのLomoを動画作成マシンとして、その先にネット上の映像アーカイブ(映写室)を提供することまで夢が実現しているのである。35mmフィルムでデジタル動画の作成までできるなら、8mmフィルムでもできることだろう。キネフィルムとしての歴史と残されたフィルムの量、そして資料価値はLomoKinoとしてお遊び半分の35mmフィルムの比ではないからである。そう期待したい。
posted by ihagee at 18:32| 8mmフィルム