2015年11月24日

8mmフィルムスキャナー 待望論

前々回より8mmフィルムについてブログ記事を掲載している。
8mmフィルムでの映像記録に励んでいたのは、私の父の世代であった。昭和30年〜40年代の高度経済成長期、レギュラー、スーパー8やシングル8での<ホームムービー>世代である。

その世代は今や70才台以上だろう。彼らが残した8mmフィルムの多くはそのフィルムのことを知らないその子や孫の代で捨てられる運命にある。たとえ、それが8mmフィルムという古い映像記録媒体だとなんとなく知っていても、酸っぱい臭いがするフィルムはもうダメだと思って捨ててしまうことが多い。臭わなくても映写機がなければもう観られないとか、業者に頼んでデジタル化するにもコストがかかるとかで、簡単に諦めて捨ててしまうのである。

<ホームムービー>が<ホームビデオ>に切り替わった1980年代から今日までの30年間が8mmフィルムについてよく知っているか否かの世代間格差となってしまったのである。そして8mmフィルムの劣化問題と8mmフィルムを知っている世代の消滅が折悪しくも重なって、両者が共に日々消えゆく運命にある。

8mmフィルムの劣化については、前回記事で述べたが、劣化の程度にも色々ある。
リールに巻き戻せる程度フィルムに未だ柔軟性があるが、映写機内のフィルム搬送過程で受ける物理的な力の下では破断や折れ曲がりが懸念される程度の劣化、フィルム自体に軽微なよじれや、乳剤面に軽微な剥離がある劣化、パーフォレーション(孔)の一部破損やフィルムの繋ぎ合わせた部分の強度劣化、そしてフィルム同士が癒着し塊りとなってしまった劣化などである。

そういうフィルムは大抵、納戸の戸棚の奥や押し入れの天袋に放置されている場合が多い。将来もう一度フィルムの中身を観たいと思うならば、直ちに防湿庫でフィルムを保管することをお勧めする。劣化の進行を止めることはできないが遅らせることはできるからである。カメラ店に行けば様々なタイプの防湿庫が手に入る。カメラやレンズの保管を目的としているが、フィルムの保管にも最適である。とは言っても、フィルム同士が癒着・塊りと化したら諦めるしかないだろう(それでも将来再生技術が現れるかもしれない。ゴミとして捨てないことである)。

そのように長らく捨て置かれていた8mmフィルムを映写機にいきなりかけるのは禁物。何しろ秒間17〜24コマでフィルムが映写機の中をグネグネと搬送されるのであるから、一瞬のフィルム詰まりでそのコマ分が映写機の中でグチャグチャになる可能性がある。また、映写機の光源は高熱を発するハロゲン球なので、投射口辺りでフィルムが閊えるとあっという間にフィルムがメラメラと溶けてしまう。先ずは手回しのフィルム編集機(ヤフオクなどで中古品が安く手に入る)でゆっくりとフィルムの巻き返しをしてみることである(フィルムに柔軟性がなく折れてしまいそうな場合は除く)。

通常、8mmフィルムのデジタル映像化は、映写機にフィルムをかけて白壁やテレシネボックス内のスクリーンに投影した光像を間接的にデジタルカメラで動画撮影して行う。所謂、テレシネである。しかし、前述のように経年劣化によって柔軟性を失ったり、パーフォレーション(フィルム孔)が一部千切れたり欠けたり、フィルムの繋ぎあわせた箇所の強度が劣化していたりすると、映写機においてフィルムが破損する可能性が高い。破損したフィルムを再び繋ぎあわせる為には専用のスライサーとセメントやテープが必要であるが、そんな機材を持ち合わせている人は少ないだろう。たとえあったとしても使い方もよくわからないし、また別の箇所で破損すれば修復の繰り返しでキリがない。

従って、できれば高速でフィルムが複雑に走行する映写機は使いたくないところである。フィルムを曲げない・フィルムの孔(パーフォレーション)をフィルムの搬送に使わない・高速走行させない・フィルム面の多少の反りはクリアする、そして一コマ毎にスキャンする。が理想である。Wolverine社の8mmフィルムスキャナはこれらの要件を満たしているが、なにぶんにもフィルムを手で送らなくてはならない。そしてコマの位置決めは目視で行うのもつらい。パーフォレーション(フィルム孔)に頼らず、フィルム給送量を検出し、ローラを駆動させてフィルム面を正確にステッピング搬送する技術はすでにオリンパスのモータードライブのカメラで実現済(特開平7-092530)なので、この辺りは技術的にクリアできそうである。また、リールに巻いたフィルムをこの機械で扱うにはフィルムのサプライとテイクアップの部分でそれぞれリールを支持する部分がないと具合が悪い。簡単に考えるならサプライ(フィルムの送り出し)側のリールを支持する部分だけを備え、テイクアップ(フィルムの巻き取り)側はフィルムの自由落下でも構わない。機械を机の端に設置してスキャンが終わったフィルムは重力を利用して床上の箱の中に自然に落下させる。全て処理が終わったら手でサプライ側のリールを手回しして巻き取れば良いのである。モーターで無理やりテイクアップしてサプライと同期が取れなくなって事故が起きるよりもフィルムには自然なテンションのかかり方でその方が良いかもしれない。ここまでは周知技術のアセンブリですぐにできそうだ。

H07092530.png
(特開平7-092530)

コマ単位の静止画像を自動的且つ連続的に取得できれば良しとしたい。合成し動画とするには後処理が必要だが、GoogleのPiscaでとりあえず合成し、YouTubeにアップロードしてからYouTubeの機能(スタビライズ・トリミング・速度調整)を行えば、それなりにデジタル映像(動画)となる。

(Wolverineの8mmフィルムスキャナーでのPiscaを用いた後処理説明・英語)

この後処理を一括してネット上で行い、そのまま映像を投稿するサービスを機械ごと提供してくれれば御の字であろう。例えば、Wolverine社の8mmフィルムスキャナの新製品ではフィルムからコマ単位の静止画像の取り込みは自動化され(一晩寝ている間に終わり)、その先、Wolverine社のネットサイトにそれら静止画像をまとめてアップロードすると、専用のサイトで動画に自動的に合成され(ネット上でさらに編集可能)、仮想空間(映写室)で電子化した動画を他者と共有することができるようになれば素晴らしいかもしれない。Lomoが35mmフィルムを用いたLomoKinoですでに仮想空間での映写室を提供しているのでこれが参考になる。こんなサービスまで用意されている8mm フィルムスキャナーの登場を待望したい。

ところで、reflecta ScanSuper8 が話題のようだ(216000円)。ドイツ製だが国内で販売されるようだ。でもこんなことになったら目も当てられない。

(reflecta ScanSuper8 でのフィルム詰まり)

パーフォレーション(フィルム孔)頼りでフィルムを搬送するreflecta ScanSuper8の欠点である。またこの機械はスーパー8にだけしか対応していない。孔を頼ってフィルム搬送をする限りそうなる(レギュラーは孔の位置と大きさが異なる)。そして、フィルムの経年劣化でその孔が途中で欠けたり裂けていたりするとたちまちこうなる。寝ている間に処理が済むと思って朝ビックリということになりかねない。日本と違って湿気が少ない国の製品であるから、湿気で劣化の程度の重い我が国のフィルムを想定していないのだろう。値段も筐体もでかいので、やはりWolverine社の製品程度の値段と大きさがコンシューマでの収まり限度である。
posted by ihagee at 19:54| 8mmフィルム