2022年09月07日

IOCへ権利譲渡!?


ミライトワ ソメイティ、もうすぐ見納め!? IOCへ権利譲渡 活用に壁 「マスコットだってレガシー」 ファン存続希望

都スポーツレガシー活用促進課に聞くと、確かにマスコットの知的財産権は昨年12月末に大会組織委員会からIOCと国際パラリンピック委員会(IPC)に無償譲渡されていた。13年に締結した開催都市契約に基づいているという。この契約には大会中止の決定権がIOCにあるとする条項もあり、コロナ禍で「不平等条約」と揶揄やゆされたほど強力なもの。市松模様のエンブレムや「TOKYO2020」の呼称も譲渡の対象だった。

東京新聞web 2022年9月6日付記事から引用

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ミライトワ ソメイティといったマスコットは著作物だが、「ミライトワ」「ソメイティ」といった文字はそれぞれ登録商標(登録No. 6127484、6127485)であり、市松模様のエンブレムや「TOKYO2020」も登録商標である。マスコット、つまり、ぬいぐるみなどキャラクター商品(著作物)であっても、商品自体にそれら登録商標が付されているのだから商標を使用していることでもある。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は公益財団法人。ゆえに同委員会の取得した商標権は公益著名商標に係るものである。

商標法の公益著名商標の譲渡・移転禁止条項(商標法24条の2第2及び3項)に照らすと、これら公益著名商標に係る商標権の「無償譲渡」が特定承継である場合、法は特定承継を認めていない。ゆえに、IOCへのそれら公益著名商標に係る商標権の「無償譲渡」は違法の可能性が極めて高い大会組織委員会からIOCと国際パラリンピック委員会(IPC)に「無償譲渡」はできないのである。

法が認めるのは移転であって(一般承継)、その場合は事業ごとであり、大会組織委員会の事業をIOCがそっくり引き継ぐ筈もなく、また、IOCは引き継ぐ法的身分もない(日本の法律での公益法人ではない)。

特許の無名塾:五輪知財を考える(弁理士:柴大介)「IOC登録商標『オリンピック・エンブレム』無効審判(番外編):ミライトワ・ソメイティ見納めに待った!」でこの違法性について記事があるので一読をお勧めする。

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東京新聞は、組織委員会のオリンピック関連商標の権利がIOCへ「無償譲渡」されたという事実関係を特許庁の記録に照らして確認し、それが商標法では認められていない特定承継であるのであれば、違法な譲渡の可能性がある旨を報道しなければならないだろう。もうすぐ見納め!?悲しいな、などと読者と共に言っている場合ではないのである。大会組織委員会からIOCと国際パラリンピック委員会(IPC)に「無償譲渡」はできない、と書くべきである。

連日報道されている大会組織委員会元理事とスポンサー企業との間での受託収賄・贈賄問題についても、スポンサー契約のうち、公益著名商標を客体とした第三者への使用許諾は商標法で禁じられており(商標法改正前)、法改正前の契約行為の基づくスポンサー企業の使用はゆえに商標権侵害行為となる(大会組織委員会はスポンサー企業に自らの商標権について侵害行為をさせていたことになる)。契約当事者間で、差止請求権等禁止権の不行使契約等を結ぶことにより実質的に使用権を許諾したかのような状態にもできるが、公序良俗の観点から問題がある。公益性を担保とするオリンピック関連商標ゆえ、このような私人間の私益に係る合意はなおさら相応しくない。況してや一般市民によるオリンピック関連商標の侵害行為に対しては、大会組織委員会は法的措置も含め厳しく対応するという(アンブッシュマーケティング対策)のだから、保護法益の均衡という視点からもこのような身内(スポンサー企業)の侵害行為を黙認することは到底許されることではない。

商品化権などと称して、実質サブライセンス(使用許諾を受けたライセンシーがさらに別の人に再許諾)まで行われていたようだが、商標法の保護範囲ではない。

また、IOCと東京都およびJOCとの間での開催都市契約ならびにIOCとトヨタなどとの間のパートナーシップ契約に至っては、IOCは日本の法律では権利能力なき社団であり(法人格を有していない)、その場合、IOCはそもそも契約当事者足り得ず、それら契約は無効である。

事程左様に、東京オリンピックでは、アスリート以外の利害関係者たち(IOCファミリー)は違法・脱法行為を公然且つ大規模に行っているのである。

(おわり)

関連記事:「IOC登録商標『五輪』無効審判関連動画(審決:請求不成立)

追伸:高橋元大会組織委員会理事が自ら利害関係のあるコモンズ2にオリンピック関連商標の使用権許諾を与え、見返りにリベートを受け取っていたと報じられている。コモンズ2は同商標を付したマスクをオリンピック公式グッズとして販売していた。オリンピック関連商標は公益著名商標であり、商標法改正後は第三者に商標権者(=公益法人)は使用許諾可能であるが、そのライセンス料(=協賛金)は公益目的事業に用いなければならない。高橋元理事はコモンズ2から裏金をコンサルタント料名目で振り込んでもらっていた(自らの懐に入れていた)ことになり、公益著名商標の使用許諾が私益に供していたということになる同理事個人ばかりではなく、その商標の管理義務がある大会組織委員会の責任(商標法上の公序良俗違反)が問われるのは当然である。商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない。

記事(出典):
「オリ・パラ汚職」高橋容疑者の「五輪グッズ利権」逮捕された後輩にライセンスを与え「公式マスク」販売


posted by ihagee at 02:43| 東京オリンピック