2021年06月21日

COVID-19 ワクチン接種への異論 - 続き4



集団接種なる大規模な公衆衛生的介入それ自体が「遺伝子ワクチン」の実質臨床試験となっていること=未だエビデンス(医学的証拠)が揃わない状況、自体がまさに「予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素になっている」(拙稿「COVID-19 ワクチン接種への異論 - 続き2」)

未だエビデンス(医学的証拠)が揃わない状況(特に中長期的臨床治験結果)。これは動かぬ事実であろう。この一点こそが、「予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素」に他ならない。

「遺伝子ワクチン(Pfizer-BioNTech, Moderna)」は緊急時に承認審査を大幅に短縮できる医薬品医療機器等法第14 条の3に基づく「特例承認」を与えたものゆえ、事後の継続的な検証が必要であること(今もって、有効性と安全性が通常の「承認」を以って担保されていないこと、「遺伝子ワクチン(Pfizer-BioNTech, Moderna)」は米などで第V相試験(検証的試験)を実施中であること(治験中)であることは、知っておくべきだろう。

Pfizer-BioNTech コロナウイルス ワクチンの第V相試験(米などでの臨床試験=健康な個人における COVID-19 に対する RNA ワクチン候補の安全性、忍容性、免疫原性、および有効性を説明するための研究)の推定研究完了日:2023 年 5月 2 日、Moderna コロナウイルス ワクチンの第V相試験(米国内での臨床試験=COVID-19 を予防するための 18 歳以上の成人における mRNA-1273 ワクチンの有効性、安全性、免疫原性を評価するための研究)の推定研究完了日:2022 年 10月 27 日である。

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ワクチン敵視、背景に疎外感 「反対派」レッテル貼り危険 専門家「互いに尊重を」

" 企業や大学による職域接種が21日から本格化する新型コロナウイルスワクチン。普及が進む一方、インターネット交流サイト(SNS)上では接種への抗議をあおったり、デマを拡散したりする動きも強まる。専門家は「ワクチンへの不安や警戒感だけでなく、そうした気持ちを理解されない『疎外感』がある」と分析。「接種を受けたい人も受けたくない人も、互いの判断を尊重し合うべきだ」と訴える。SNSでワクチンの危険性を呼び掛ける人たちの投稿には「接種すると遺伝子を組み換えられる」「不妊の原因になるとファイザー社が認めた」などのデマも交じる。「打つと5G電波で操られる」「体が磁力を帯びる」といった荒唐無稽な主張も見受けられる。こうした投稿を嘲笑するユーザーも多いが、リスクコミュニケーションに詳しい土田昭司・関西大教授(安全心理学)は「『ワクチン反対派はおかしい』などと安易にラベリング(レッテル貼り)して突き放すことは、事態をさらに悪化させる」と危惧。「社会が不安に寄り添わず、親身に話を聞いてくれるのはカルト集団や陰謀論者だけ、という状況は非常に危険だ」と警告する。実際、ワクチンの危険性を訴える人たちの投稿には、周囲からの孤立を嘆く意見が少なくない。ツイッターでワクチンに懐疑的な投稿をしていた2児の母を名乗る人物は「家族や友人に話しても分かってもらえない」「これまで大事にしてきた人との繋がりが切れてしまいそう」と吐露。子供への接種を進める自治体に集団抗議するSNSグループの参加者らは「皆さんと共感しあい、団結できることが救いです」「親身に話を聞いて下さった」などと活発に書き込んでいた。土田教授は「法律上、接種は努力義務で、受けないことも認められている。社会はワクチンを打ちたくない人の気持ちに寄り添わないといけない」と強調。「他人に接種を強制するのも、接種を妨害するのも『リスクコミュニケーションの失敗』という意味では同じ。反対意見に耳を傾けて対話し、科学的事実に基づいた議論をすることが重要だ」と語った。 " (時事通信社 2021年6月21日付記事引用)

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上掲の記事には幾つか問題点がある。

@ 「ワクチン敵視」というタイトル
「敵視」=敵と見て憎むこと、がワクチン接種を留保する人々の共通項であるかの印象を読み手に強く与える。接種を留保することと、「敵視」することは全く異なる態度である
A 「背景に疎外感」というタイトル
接種するもしないも個人の問題でありその前提はエビデンス(医学的証拠)の有無であるから、「...感」なる集団意識前提の「仲間はずれ」といった心理的要因があたかも接種を留保する人々の背景にあるかの書き方はおかしい
B ”「接種すると遺伝子を組み換えられる」「不妊の原因になるとファイザー社が認めた」などのデマも交じる。「打つと5G電波で操られる」「体が磁力を帯びる」” などと「荒唐無稽」と但し書きをしながらも、わざわざ書き連ねることによって、むしろ、接種を留保する人々に対するラベリング(レッテル貼り)をこの記事は行なっている。エビデンス(医学的証拠)の有無の上で接種判断をしようとする人々(科学的正論)を、このような極端な傍論(非科学的結論)を以って有相無相に扱う粗雑な文脈である。
C 「親身に話を聞いてくれるのはカルト集団や陰謀論者だけ」
エビデンス(医学的証拠)の有無の上で接種判断をしようとする人々(科学的判断)をあたかもこのような極端な傍論(非科学的結論)に頼るばかりの人々であるかに読者に印象を与える点でこれも粗雑な文脈である。
D 「反対意見に耳を傾けて対話し」
対話でエビデンス(医学的証拠)は生まれない。BioNTech SE(Pfizer協力)およびModernaTX, Inc.からの治験結果報告待ち(治験期間中)のワクチンについて未だエビデンス(医学的証拠)が揃っていない状況では科学的判断要素がない。その上で一体何を対話するというのだろうか?「安全が確認されていない(特に中長期的)」状況では「必要だから安全(に決まっている)」と往々にして「必要性」が声高に語られる。ゆえに、「反対意見に耳を傾けて」対話する前提は「必要性」であっても、治験結果ではない。その「必要性」は他者への「思い」といった絆意識(集団心理)に傾斜するが、これは科学ではない。

「特にワクチンは効果があると思っていることと、自分が予防接種を受けることで他者も守るという思いがあることは他の要因よりも強い関連性が有り、予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素になっていることが明らかになりました。」(東京医科大学 website

E「リスクコミュニケーションの失敗」
本来であれば個人水準の臨床試験・疫学研究から得られたエビデンス(医学的証拠)に基づいて公衆衛生的介入が行われるべきところ、公衆衛生的介入それ自体が「遺伝子ワクチン」の実質臨床試験という逆順が罷り通っている。この逆順ではリスク評価自体が成立しない。ゆえに「リスクコミュニケーション」自体が存在し得ないのである。ゆえに、リスクコミュニケーションから解を求めようとする上掲の記事には無理がある。
F「科学的事実に基づいた議論をすることが重要だ」
BioNTech SE(Pfizer協力)およびModernaTX, Inc.からの治験結果報告待ち(治験期間中)のワクチンについて未だエビデンス(医学的証拠=安全性)が揃っていない。「科学的事実に基づいた議論をすることが重要だ」というのならば、「安全性について未だ確認されていないが」という前提でする議論とは何なのか、ということになる。この「科学的事実」については接種直後の副反応について臨床的に把握している事実の限りであっても、接種してから数年先の中長期的影響については「議論」の基となる科学的事実が存在していない。

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集団接種なる大規模な公衆衛生的介入それ自体が「遺伝子ワクチン」の実質臨床試験となっていること=未だエビデンス(医学的証拠)が揃わない状況、自体がまさに「予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素になっている」(拙稿「COVID-19 ワクチン接種への異論 - 続き2」)は然りで、エビデンス(医学的証拠)に基づき(特に中長期の臨床治験結果)、接種判断を客観的に行うのは個人の自由。

しかるに、その他の主観的要因(心理的要因)があたかも接種の判断要素であるかの書き方や、公衆衛生的介入それ自体が「遺伝子ワクチン」の実質臨床試験という逆順(リスクを臨床試験で実証しようとしている)ゆえ、リスクに関する正確な情報(特に中長期的影響)が今は判らないわけだから、その情報なしでは成立し得ない「リスクコミュニケーション」があたかも可能かの上掲の記事はおかしいのではないか?

(おわり)

追記:
”「接種するつもり」に比べ、「しないつもり」「決めていない」と回答したのは、女性や預貯金額の少ない人、他人を信用しない傾向のある人、全般的な不安感を抱える人などに多かった。” (「性別や預貯金額も関係? ワクチン接種の意欲調査―経産研究所」 2021年6月5日付時事通信記事から引用)

「意欲(思い)」と「意思(判断)」の区別もなく「集団」と「個人」の見境いもない調査に何の意味があるのか?このような記事も、接種を留保する人々に対する差別主義的なラベリング(レッテル貼り)である。


posted by ihagee at 13:28| 日記

2021年06月14日

全面的「支持」は表明していない(G7首脳宣言)



Carbis Bay G7 Summit Communiqué:
Our Shared Agenda for Global Action to Build Back Better

Carbis Bay, England, June 13, 2021
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Conclusion
70. In Cornwall we have revitalised our G7 partnership. Our Shared Agenda for Global Action is a statement of our shared vision and ambition as we continue to collaborate this year and under future Presidencies. As we do so we look forward to joining with others to ensure we build back better, in particular at the G20 Summit, COP26, and CBD15 and the UN General Assembly, and reiterate our support for the holding of the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe and secure manner as a symbol of global unity in overcoming COVID-19.

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カービスベイ G7サミット コミュニケ
より良い未来を築くためのグローバルな行動に向けた我々の共有アジェンダ

2021年6月13日、イギリス、カービスベイ
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結語
70. コーンウォールで、私たちはG7のパートナーシップをあらためて確認しました。私たちの「世界的行動のための共有アジェンダ」は、今年、そして将来の議長国の下で協力を続けていく上での、私たちの共有ビジョンと大望を示すものです。また、COVID-19を克服するための世界的な結束の象徴として、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会が安全安心に開催することへの支持を改めて表明します。(拙者翻訳)

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「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催することを改めて支持すると表明」(NHK 2021年6月14日付記事から引用)

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「もちろん、あなたを支持する」など言っていない。の続き。

首相官邸は未だ日本語訳でのG7首脳宣言(G7サミット コミュニケ)を公表していないが、NHKをはじめ主要メディアは G7首脳が「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催することを改めて支持すると表明」とこぞって報道している。

しかし、ここでも英文から読み取れないニュアンスを日本語に含ませて、開催するという日本の立場をG7首脳が全面的に支持したかの印象操作が施されている

support for は日本語に訳すと「〜への支持」の意味であるので、相手(日本)の立場を全面的に支持するかに我々は受け取るが、英語でのニュアンスは、何かにチャレンジしている相手(日本)「への支援・応援」の意味であって、行動の主体は相手(日本)であり、具体的な態様= in a safe and secure manner 「安全安心」を前提としていることから、我々が理解する「〜への支持(全面的支持)」ではない。つまり、「安全安心」に開催することを前提に「支援」を改めて表明する、ということで、日本の立場にまわって支持する意味ではない。

「安全安心」に開催することを日本に要求した上での開催への支援で、その全ての行動主体は日本であることに変わりはなく、むしろ「安全安心」なる態様を伴わず開催した場合、その結果責任は日本が全て負うことになると声明したことになる

菅首相にとって決して手放しで喜べるような「全面的支持」表明ではないのである。「安全安心」なる態様が果たせない場合も「支持」を表明するわけではない。ゆえに、たとえば世界保健機関 (World Health Organization: WHO) など公衆衛生に係る国際機関が、この態様に照らし開催に明確な疑義を示せば、東京オリンピック・パラリンピックを開催することに、G7首脳は尚も支持を表明することにはならないと理解すべきだろう。

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今夏の東京五輪・パラリンピックについては、「全首脳から大変力強い支持をいただいた」と強調した上で、「しっかりと開会し、成功に導かなければならない。そういう決意を新たにした」と述べた。(読売新聞 2021年6月13日付記事引用)

菅首相がこのような理解をしているとすれば、勘違いも甚だしい。G7のコミュニケで支持するは「成功」でも「決意」でもなく、「安全安心」なる態様への「安全=科学的証拠」「安心=補償」なる担保を日本が行うことに他ならない(拙稿「安全は科学・安心は補償」)。

「安全=科学的証拠」「安心=補償」を開催要件として担保することなど常識的に考えれば到底できる筈もないが、菅首相は安請け合いをしてしまったことになる。

(おわり)

追記:
” 五輪やスポーツビジネスに詳しい大阪産業大の永田靖教授(54)は、選手が感染した場合に「損害賠償を請求される可能性があります」と重大指摘した。・・・訴える対象は開催権限を持つIOCかホスト国の日本で、どちらかが責任を問われそうだが、同氏は「私は日本だと思います」とキッパリ。”(東スポ web 2021年6月14日記事引用)
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「安全=科学的証拠」「安心=補償」を開催要件として日本が担保するということは、上述のような賠償責任をIOCではなく日本が負うとわざわざ菅首相はG7首脳宣言(G7サミット コミュニケ)に盛り込んだということ。そう日本以外の首脳は理解したことであろう。IOCは今頃胸をなで下ろしているに違いない。
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菅首相の唱える「安全安心」は国内では心がけ程度の繰り言で済むかもしれないが、契約前提の国際社会では必ず言質を取られる。「安全」ならばリスク評価を伴う科学的証拠を示さなくてはならない。「安心」ならば万一選手が感染した場合に損害賠償を行うことを確約しなければならない。
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一民間団体の国際競技大会の開催の為と言って、国内同様に「安心安全」をG7首脳会議を介して国際社会に向かって安請け合いした結果責任まで菅首相は考えが及ばないだろう。日本の国益と信用を「安心安全」なる言葉と共に "安易に" 開催の秤にかけたその暗愚は極まりない。
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そもそも、国際機関でもない一民間団体の事業を、国際的政治経済の喫緊な課題を扱うG7首脳会議(サミット)に於いて、その開催の言質を取り付けること自体ナンセンスだろう。ナンセンスゆえに、G7首脳宣言では逆に「安全安心」なる態様の重い言質を日本から引き出す内容になっており、日本の国内問題に明確に押し込まれている。暗愚な菅首相、および国内の主要メディアはそんなことにも気付いていない。
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「外交は内政の延長」(ハロルド・ニコルソン)とはよく知られている定理である。ところが安倍→菅政権と内政が思わしくない故に「外交らしきもの」を以って、さも外側で得点を重ねているかに演出し、この定理とは真逆の「内政は外交の延長」となっている。今般のG7首脳会議での開催「支持」取り付けが典型であろう。そもそも内政をまともに行うだけの能力がないから外見から繕っているのではないか?データの上ばかりに奢るアベノミクスもそのデータが不正とあっては看板倒れ、そして安倍(前)首相自身の国民の信望は著しく低い。それは菅首相も受け継いでいる。内政のいい加減さが外交を経てまた内政に降りかかってくるという本末転倒な因果律にある。内政として譲ることができない「固有の領土」という主張すら、対露外交の結果、口ごもらざるを得なくなった北方領土問題に顕著に現れている。五輪開催も同じ因果律にあるだろう。
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「内政は外交の延長」でしかない安倍=菅政権にあって、五輪開催を以って今度は何が外から押し込まれるのか、そんな暗愚な政権ゆえの不幸な因果律に巻き込まれるのは我々国民である。


posted by ihagee at 07:23| 東京オリンピック

2021年06月13日

「もちろん、あなたを支持する」など言っていない。



Cornwall, England, June 12 (Jiji Press)--U.S. President Joe Biden threw his support on Saturday behind Japan's plans to hold the Tokyo Olympic and Paralympic Games this summer as planned. At 10-minute talks with Biden on the sidelines of the three-day Group of Seven summit meeting in a seaside resort in Cornwall, southwestern England, Japanese Prime Minister Yoshihide Suga said his government plans to hold the Tokyo Games as scheduled after a one-year postponement caused by the novel coronavirus pandemic. Biden said, "Off course, I support you," according to Japanese officials. The two leaders met in person for the first time since they held a bilateral summit meeting in Washington in April. On the G-7 leaders' declaration to sum up their discussions at the summit, Suga said the leaders should issue a strong message in line with the results of the Japan-U.S. summit, adding that he hopes to work closely with Biden. (Jijicom English 2021年6月13日付記事引用)

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(外国メディアから "Off course"を指摘されいずれJijicom Englishは内容を更新するだろうから、元記事を魚拓した。)

英国コーンウォール 6月12日(時事通信)--ジョー・バイデン米大統領は12日、今夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を予定通り開催する日本の計画に支持を表明した。日本の菅義偉首相は、英国南西部コーンウォールの海辺のリゾート地で開催された3日間のG7首脳会議に合わせてバイデン氏と10分間話し合い、新型コロナウイルスの大流行により1年間延期された東京大会を予定通り開催することを明らかにした。日本政府関係者によると、バイデン氏は「外れているね??、あなたを支持します」と述べたとのこと。両首脳が直接会ったのは、4月にワシントンで二国間首脳会談を行って以来のことである。菅氏は、G7首脳がサミットでの議論を総括する宣言を行うことについて、「日米首脳会談の成果に沿った強いメッセージを出すべきだ」と述べ、バイデン氏と緊密に協力していきたいと述べた。(拙者翻訳)

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【コーンウォール時事】菅義偉首相は12日(日本時間同日)、英南西部コーンウォールの先進7カ国首脳会議(G7サミット)会場で、バイデン米大統領と断続的に計約10分間協議した。首相が東京五輪・パラリンピックを開催する考えを示したのに対し、バイデン氏は「もちろん、あなたを支持します(オフコース・アイ・サポート・ユー)」と伝えた。菅、バイデン両氏が直接会話を交わすのは4月にワシントンで行った首脳会談以来。首相はサミット首脳宣言の取りまとめに向け「先の首脳会談の成果を踏まえ力強いメッセージを発揮すべきであり、日米両首脳間で緊密に連携していきたい」と呼び掛け、バイデン氏は「完全に同じ立場であり、首相と共に議論をリードしていきたい」と応じた。中国の軍事的、経済的な影響力拡大に関し、首相は「自由で開かれたインド太平洋」構想と東南アジア諸国連合(ASEAN)の役割の重要性を強調。バイデン氏は「同感であり、日米が共同して取り組んでいきたい」と述べた。(時事通信社2021年6月13日記事引用)

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英語を日本語に置き換えると、日本語に付随するニュアンスにとかく捕らわれてしまう。

talk with は漠然と話し合うという意味だから、慎重に検討して結論を出す必要があるような場面では使わない。真面目に議論するのなら「協議(discuss)」だが、時事通信社の日本語での報道では元の talk with (話し合い)が「協議(discuss)」と置き換わっている。10分程度の話し合いを日本語でも「協議」とは言わないから明らかに時事通信社のミスリードである

threw his support on (〜に支持を表明した)については、慣用句が throw ones support behind (支持する側に回る)なので、この英文記事を書いた人はネイティブではないだろう。〈人が〉〈人・ものを〉〔体の一部で〕支えるの意味(例えば、support on the technical issues 「技術サポート」とか)でのsupport on を「〜の支持にまわる、〜の賛成にまわる」の意味の throw ones support behindと混同している。

この英文記事を書いた人はネイティブではないのは、"Off course, I support you," でも言える。Off course は「もちろん=Of course」の意味はない。"Off course, I support you," は日本政府関係者から伝わるバイデン氏の発言のようだが(元の英文記事では日本政府関係者からの伝聞であるのに、日本語の時事通信報ではそうなっていない)、そんな変な英語をバイデン氏が使う筈がない。“off course”=「進路から外れる・進行通りではない」だからだ。"Off course, I support you," はゆえに「外れているね??、あなたを支持します」と何を言っているのかわからなくなる。

"I support you," についても同様で、日本語では「あなたを支持します」となるが、英語での意味は何かにチャレンジしている相手に応援するニュアンスである。日本語で表現すれば「あなたを応援します」ということで、相手の立場を「支持」したことには必ずしもならない。"Thank you for your support." が「お世話になります」の意味だから、「応援・支援」の類である。明確に相手の立場を支持するのであれば、"I stand by you," と言う。この場合、相手の立場の側にまわって支持するのであれば、"I stand behind you," と言うだろう。

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「東京オリンピック・パラリンピックでありますけれども、今年の夏、人類がコロナとの戦いに打ち勝った証として、安全・安心の大会を実現したい、そうしたことを私から発言いたしまして、G7首脳全員の支持を得ることができました。大変心強い、このように思っています。」(2021年2月19日付「G7首脳テレビ会議についての会見」ら抜粋引用・首相官邸HPより)について、拙稿「G7ステートメントの牽強付会(日本)」で述べたと同様、英文から読み取れないニュアンスを日本語に含ませて、開催するという日本の立場をバイデン氏が支持したかの時事通信の報道は正しくない(国内メディアがこぞって時事通信報を引用しているが)。

(おわり)

posted by ihagee at 13:02| 東京オリンピック