2021年02月04日
「人としてはやりたくない」・活動の真価が今問われている
【ロンドンAFP=時事】英国で、新型コロナウイルスの流行の中、医療従事者らのために多額の寄付を集め国民的英雄となった、退役軍人のトム・ムーアさん(100)が2日、同ウイルスに感染し亡くなった。家族が明らかにした。・・・ムーアさんは、自宅の庭を歩行器を使って歩き、国民保健サービス(NHS)のために多額の寄付金を集めた他、医療従事者への応援歌として「You'll Never Walk Alone」をカバーし、国内の音楽シングルチャートで史上最高齢の1位を獲得した。(2021年2月3日付AFP=時事記事引用
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老体に鞭打ち歩行器で自宅の庭を百往復し浄財を募り、約3280万ポンド(約47億円)の慈善となった。
今夏開催予定とされるオリンピック・パラリンピックに出場を目指すアスリート達は各々の名誉、スポンサー企業や背負う国旗のために、コロナ禍で世界中の多くの人々が困窮しているのも尻目にタイムを競おうとしている。上述のニュースに我が身を照らして恥ずかしくないのだろうか?その鍛えた身体を使って今すべきことは、NOC、スポンサー企業、広告代理店、放送局、競技団体にメダルを以って奉仕することではなかろう。
強行開催は一般市民に投じるべき医療資源を奪い、開催都市を中心に感染拡大の不測なリスクをもたらす。沿道やスタジアムで一般市民が観戦できない競技になろうとも、夢や希望を与えられる、中止にすれば頑張ってきたアスリートが可哀想・・と得手勝手を開催に理由づけるが、民心は開催気運から離れ、「開催すべきではない」と中止世論が大勢を占めている。
「アスリートとしてはやりたいです。人としてはやりたくないです(出場内定の新谷仁美氏)」
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JOCチャリティーオークション
” JOCアスリート委員会は子どもたちの未来のためにチャリティーオークションを開催します。オリンピアン・トップアスリートが、思い入れのある品に直筆のサインを入れて出品。本チャリティーオークションで得られた収益金は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けている子どもたち、ジュニア世代のアスリートへの支援に役立てます。子どもたちの未来のために、皆様からのご協力を心からお待ちしております。”
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この際、リアルな開催に代えて、世界各国のNOC(オリンピック委員会)をネットで繋ぎ、新型コロナウイルス感染症の医療資源(特に医療貧国に対する)のための寄付金を各国のアスリートが世界市民に募るという大義の下、バーチャルな大会を東京主体で開催するとなれば、国際社会はその意義を大いに理解するだろう。
IOCは過去の大会でのオリンピック資産を惜しげなくオークションに出品し、アスリートはグッズを売るばかりではなく、ムーアさんのように自宅の庭で体を使って寄付を募る、スポンサー企業から集めた協賛金をスポーツ振興でなく、新型コロナウイルス感染症の医療資源に振り向ける・・そういった個人の名誉ではないアスリート以前、人として行うべきことを示してこそ、オリンピック憲章の掲げる「その行使し得る手段の範囲内で平和を推進する活動(オリンピックムーブメント)」となるのではないか?
新型コロナウイルス感染に国際社会が喘ぐ中、人の道に反する言動を組織の長(IOCバッハ会長・森大会組織委員長)が臆せず率先し「人としてはやりたくない」とアスリートに言わしめるオリンピックにしてしまった。「よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重(オリンピック憲章・根本原則)」を忘れ、ともあれ競技ありき・開催ありきの商業主義に傾いたオリンピックならばもはや存在意義はない。
(おわり)
posted by ihagee at 03:20| 日記