SARS-CoV-2の起源と継続的な進化について
Xiaolu Tang 、 Changcheng Wu、Xiang Li、Yuhe Song、Xinmin Yao、Xinkai Wu、Yange Duan、Hong Zhang、Yirong Wang、Zhaohui Qian他
National Science Review、nwaa036、https://doi.org/10.1093/nsr/nwaa036
公開: 2020年3月3日
Copyright: 2020 China Science Publishing & Media Ltd. (Science Press) / National Science Review
”要約
SARS-CoV-2の流行は、2019年12月下旬に中国の武漢で始まり、それ以来中国の大部分に影響を及ぼし、世界的な大きな懸念を引き起こしています。ここでは、SARS-CoV-2と他の関連するコロナウイルスの間の分子分岐の程度を調査しました。SARS-CoV-2とコウモリのSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV; RaTG13)の間のゲノムヌクレオチドにはわずか4%の変動しかありませんでしたが、中性部位での差は17%で、以前に推定されたよりも2つのウイルス間の相違がはるかに大きいことを示唆しています。我々の結果は、SARS-CoV-2およびセンザンコウSARSr-CoVからのウイルスに見られるスパイクの受容体結合ドメイン(RBD)の機能部位における新しい変異の発生は、組換え以外に突然変異と自然淘汰によって引き起こされる可能性が高いことを示唆しています。103例の SARS-CoV-2ゲノムの集団遺伝分析は、これらのウイルスが2つの主要な型(LとSで指定)に進化したことを示し、これは、現在までにシーケンスされたウイルス株全体でほぼ完全な連鎖を示す2つの異なるSNPによって明確に定義されています。L型(〜70%)はS型(〜30%)よりも優勢ですが、S型が先祖バージョンであることがわかりました。武漢の発生の初期段階ではL型がより一般的でしたが、L型の頻度は2020年1月初旬以降減少しました。人間を介することでより攻撃的で感染力の強いL型へ選択圧が加わった可能性があります。一方、進化的に古く、攻撃性の低いS型は、選択圧が比較的弱いため、相対度数が増加した可能性があります。これらの知見はゲノムデータ、疫学的データ、およびコロナウイルス疾患2019(COVID-19)患者の臨床症状のカルテ記録を組合せる包括的研究の速やかな必要性を求めるものです。”
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“中国の研究者チームは新型コロナウイルスは二つの型に分類でき、感染力に差があることが分かったと中国の英字科学誌「国家科学評論」に発表した。中国メディアが伝えた。
ウイルスのサンプル103例の遺伝子配列を調べ、うち101例を「L亜型」か「S亜型」に分類した。約70%がL型。L型の方が感染力が強いとみられ、湖北省武漢で爆発的流行が起きた時期に多く確認され、1月初旬以降は減少した。
S型はコウモリから検出されたコロナウイルスに遺伝子的に近く、古い型とみられる。一つの型にだけ感染する症例が大半だったが、武漢への旅行歴のある米国の患者1人は、両方の型に感染した可能性があった。“(福井新聞ONLINE 2020年3月26日付記事から引用)
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“日本では通勤電車等が過密で、オフィスも欧米のような個室ではなく大部屋が基本だ。しかも欧州は多くのスポットの閉鎖など、厳しい対策をとっている。欧米の感染力の高さは、生活習慣や環境、住居、対策、初期出動、意識の違いでは説明できない。むしろウイルスの変異に原因を求めるべきではないか。その場合、 欧州型コロナは日韓や東南アジアで広がったコロナよりはるかに危険ということになる。死亡率と感染力を掛け合わせると10倍以上の差といえよう。悪性のL型が多いとされる中国と比較しても欧州の方が危険なのである。”(「欧米で流行中のコロナは今までより10倍以上危険(山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員)」論座2020年3月25日記事から引用)
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日本人の清潔好きや、欧米人のようなスキンシップは習慣にないことが、感染を抑え込んできた要因(および検査数を抑えているから)などと言われてきたが、どうやらそういうことばかりでもないらしい。
感染力の弱いS型ゆえに感染者数が抑えられてきた事情がありそうだ。春節前後に来日した中国人観光客が持ち込んだと懸念されるCOVID-19も同型ゆえに恐れていた程の感染の広がりにならなかったが、欧米から最近帰国した日本人観光客の感染にメディアや専門家が神経質なまでに懸念を寄せているところからすると、こちらが目下欧米を震撼させているL型ということなのだろうか(山内正敏氏の分析ではL型の変異した欧州(L)型)?
L型の患者数の指数関数的な増大ぶりは、一国の首都ですらあっという間に感染爆発(オーバーシュート)をもたらし封鎖(ロックダウン)に追い込む危険性を持つ。ロンドン、ニューヨークに次いで東京がその瀬戸際の状況と言える。
“少なくとも1カ月前とはコロナの危険度が大きく変わったと覚悟する必要があるだろう。WHOが推薦してきた対策では全然足りなくなるということだ。最悪のシナリオは、COVID-19が短い期間でさらに凶悪な方向へと進化することだ。普通にはあり得ないが、今回だけはそれも念頭に入れるべきである。”(同上引用)
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“偉い人の今後の算段が大きく変わりそうな感じである。
新たに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者が41名確認された。これまでの毎日の新規感染者数よりも大幅に大きいが、イマイチ問題の大きさが分からない。帰国者や旅行者もいるわけだし、無症状者や軽症者が街を歩いているのも確かなので、ぼちぼちと発生し続けるのは想定内だからだ。感染拡大ペースがどの程度か、それがどれぐらいひどい帰結をもたらすかの指標になる、基本再生産数R₀を雑に計算してみた。
3月1日〜3月25日までのR₀の推定値は約0.834である一方、3月19日〜3月25日までのR₀の推定値は約1.134になる。R₀は生活習慣などの影響と隔離措置など感染防止政策の効果を含む。R₀<1であれば感染症はすぐに消えてしまうが、R₀>1であれば集団免疫を獲得するまで感染経験者数は増加していく。抑制政策のつもりだったが、緩和でしかなかったわけだ。“(ニュースの社会科学的な裏側 2020年3月26日記事から引用)
“偉い人の算段が変わりそう”なのも、3月中旬以降、およそ10日の間隔を置いて波状的に東京都内でL型?感染のピークが到来し始めたことに拠るのだろう。その基本再生産数(basic reproduction number=1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)R₀は、感染が深刻なドイツでは2.5程度とされる。
“基本再生産数(R₀:すべての者が感受性を有する集団において1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)が欧州(ドイツ並み)のR₀=2.5 程度であるとすると、症状の出ない人や軽症の人を含めて、流行 50 日目には 1 日の新規感染者数が 5,414 人にのぼり、最終的に人口の 79.9%が感染すると考えられます。また、呼吸管理・全身管理を要する重篤患者数が流行 62 日目には 1,096 人に上り、この結果、地域における現有の人工呼吸器の数を超えてしまうことが想定されるため、広域な連携や受入体制の充実を図るべきです。“(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 2020年3月19日付提言)
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“偉い人の算段が変わりそう”、はより攻撃的で感染力の強いL型の流行を前提としている。昨日までの対岸の火事が、明日からは突如我々に襲い掛かってくるかもしれない。小池都知事も専門家から情報を得ているのだろう。首都封鎖(ロックダウン)を口にし始めた。くれぐれも用心を怠らないこと。自分から二次感染者を出さない日常行動を心がけることぐらいしか防衛する手段はない。
オリンピックの他愛ない与太話ができたのも昨日まで。中止せざるを得ない状況に置かれることを開催国自身が肌身に知る番になるやもしれぬ。
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帰りがけ、駅近くのスーパーを覗いた。平日にも関わらず混み合って日用品や麺類など日持ちのする物が棚から消えている。気配を察して買いに走っているのだろう。実に嫌な世の中になったもんだ。
世界各国で「買い占めやめよう!」(#StopHoarding)
買い占めはやめよう。#買い占めやめよう pic.twitter.com/HFSKLyKGxs
— 江ろ川コマン (@beautifularmpit) March 26, 2020
(おわり)