2019年08月22日

サイアノタイプ - その86(引き伸ばし機)



前回記事「フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見」で紹介したポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)を弄っているうちに短い盆休みが終わった。

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ヤフオクで三千円程で落札した四半世紀前の代物だが外観は汚れも傷もない。おそらく大学か病院の備品として保管されてきたものだろう。シャーシの内部も点検したが埃一つなく良い状態だった。

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PowerBook G3 やドライバーソフトなど、周辺の動作環境を一切整え、あとはこの本体が動作するかだけ。電源投入しSCSIで無事PowerBook G3と通信することを確認。PowerBook G3 は仮想メモリー環境だったが(RAM Doubler駆動)、押入れに不動の状態で転がっていたボンダイブルーのiBookから256MBメモリーを移植し320MB環境にすることができた。

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CI-5000Sの本来の用途はプレゼンテーション用のカラースライド(35mm カラーリバーサル)の作成にある。私の用途は本稿の通り、引き伸ばし機によるサイアノタイプのアナログネガ(モノクローム)作成なので、プレゼンテーション用ソフト(当時の定番、Adobe Persuationなど)を使う必要はない。PowerBook G3 に元からインストールしてあったAdobe Photoshop (ver.5)でCI-5000Sの解像度(4K)に合わせてRGBのグレースケール画像を用意する。

別稿「ガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)」の百年前のポストカードをスキャンしたデジタルデータを使った。4535x3024pixels の大きさで3200dpi(16bit grayscale)のデータをPhotoshop上で35mmフィルムにリサイズした。試行錯誤の結果、以下が適正値と判る。

画像解像度
ピクセル寸法:24.1 M
幅 3552 pixels
高さ 2369 pixels
幅 27.52 cm
高さ 18.35cm
解像度 327.862 pixels/inch

用紙設定 A4 781 x 521

CI 5000Sの4K解像度は、最大4096 x 2370 pixelsで、35mm フィルムは3:2のプロポーションなので、3552 x 2369 pixelsが妥当なところだろう。

ここまで用意して、さて35mmフィルムバックにKodak T-MAX 100フィルム(モノクロ36枚撮)を装填し、いざデータを送信しようとして不具合発生。

35mmフィルムバックでは一旦全ロールを暗室に繰り出し、撮影毎にパトローネに巻き取って(リワインド)収める方式だが、繰り出されたままパトローネに収まらない。フィルム送りに不具合があった。

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CI 5000S本体側に問題があればお手上げだが、本体側の動作チェック(プログラム)では正常なので、このフィルムバックに問題があると睨んで分解。問題の所在はすぐに判明した。リワインドで転位し働く歯車がグリスの固着で動かなくなっていた。状態からしてかなり長い期間本体ごと使われていなかったのだろう。

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(金属のプレートに覆われた部分に問題の歯車があった)

清掃しグリスアップ。正常に動作するようになったが、この過程でフィルムは露光してしまい無駄になった。これも学習代というところか。

Kodak T-MAX 100に代えて、Fuji Acros100をフィルムバックに装填し36枚全て無事に露光を済ませて現像した。現像前にCI 5000SのアパーチャでのRGB毎の露光状態をデジタルカメラでバルブ撮影で確認していたが、RGBを重ねた像があまりに不鮮明なので不安を覚えたが、アナログフィルム上では問題なく露光していた。モノクロームなら色ズレやら色味のおかしさは関係ないが、カラーフィルムであればキャリブレーションが必要。

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(18bitとあるのは16bitの誤り)

CI 5000Sのドライバーソフトのフィルムテーブルはいずれもポジスライドフィルムが登録されていて、ネガのモノクロフィルムは見当たらないが(上位機種のHR-6000のテーブルにはFuji Neopan 100やKodak TMAX 100が登録されているようだ)、KonicaDyna Ex100のテーブルがこの露光で使えることも判明。R, G, Bの配分やガウス補正等のパラメータは初期値のまま。モノクロームなりの特性に応じて変えるべきだろうが、この辺りは未だ機序を理解していないので手をつけなかった。

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Lucky II-C(引き伸ばしレンズ:Fujinar-E75mmF4.5)に30WのSMD UV光源を組み合わせてのプリント(vif Art (B5 H.P. surface) paper):

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(ジャスミン茶でトーニング)

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伝説の女優が35mmフィルムで蘇った。今回のフィルム出力では別の嬉しい発見があった。それは次回。

(おわり)

posted by ihagee at 03:35| サイアノタイプ

2019年08月06日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見



別項「サイアノタイプ(引き伸ばし機)」は、アナログネガ(モノクロ)と銀塩写真用引き伸ばし機(光源はUV光)を用いプリントを行っている。銀塩プリントのサイアノ版である。アナログネガは、135フィルム(35mm)、120フィルム(6x6)およびガラス写真乾板であり、いずれもアナログカメラで撮影されたもの。

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(アナログネガと引き伸ばし機)


サイアノ・タイプはデジタルネガとコンタクトプリンタ(密着焼き)の組み合わせが一般的で、そのデジタルネガは、それらアナログ記録媒体の情報をスキャナーで読み取ったデジタルデータやデジタルカメラの撮影データをOHPシートにインクジェットプリンタでプリント寸法に印刷したものを用いる。

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(デジタルネガとコンタクトプリンタ)


アナログネガの場合はアナログ(フィルムや乾板)→アナログ(紙出力)、デジタルネガの場合は[アナログ(アナログネガがある場合)→デジタル変換] デジタル(データ)→アナログ(OHPシート)→アナログ(紙出力)といった具合に、前者は入力から出力まで一貫してアナログ処理で、後者はデジタル処理が介在する。

さて、前者にはアナログネガが必要であり、そのために昔ながらにアナログカメラで白黒写真を撮ったり、写真好きな父が残した写真フィルムを使ったり、それでも足らないときはオークションサイトから他人が撮ったフィルムや乾板を入手している。

アナログカメラを使って写真を撮るのは楽しいことではあるが失敗も多い。デジカメやスマホのカメラのように記録媒体(SDカード)の容量が許す限りバシバシ撮って、これはと思うショットを選んでプリント(アナログ出力=実際はデジタルプリント)するデジカメプリントの利便性はここにある。

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「入力から出力まで一貫してアナログ処理」に拘る限り、アナログネガはアナログカメラでの撮影した媒体でなければならない。ここにアナログ人間たる私なりの拘りを託していたわけだが、サイアノ・タイプの通常の密着焼きに使用するデジタルネガ(OHPシート)を面白半分に引き伸ばし機にかけてみた。サイアノ印画紙と密着していれば光を遮蔽するインク(染料系)も引き伸ばし機のレンズを介すると光が透過したり(染料インクゆえ?)回り込んで(OHPシートゆえ?)、寝ぼけたようなプリントしか得られないことが判った。なによりも、サイアノ印画紙面上でルーペを当てても銀塩の粒子が見えないインクスポットではピントの合わせようもない。アナログネガは従来のアナログフィルムなり乾板でなければ引き伸ばし機にかけられないということだ。

「入力から出力まで一貫してアナログ処理」に拘らないのであれば、デジカメプリントのプリント(紙)の代わりにアナログフィルム(35mm)に焼き付け、引き伸ばし機(光源はUV光)のアナログネガとして「サイアノ・タイプ」に用いることが可能となる。しかし、そのようなデジタルデータからアナログネガへの変換サービスを受け付けてくれるところは今は限られているうえに、サービス料金が無茶苦茶高い(36枚分アナログネガを作成するのに二万円近くかかる)。

この変換に用いるのはフィルム・レコーダという機器だが、ヤフオクを覗くと中古が数台出品されていた。本来の用途は学会で使うポジスライドの作成で、その相性の良さから1980年代にGUIを搭載したマッキントッシュが大学や医療機関に浸透し、その後、Windowsが一般的になってもなぜか大学病院などでマックが幅をきかせていたが、アメリカ帰りのお医者さんが向こうではデファクトであったこの組み合わせをそのまま職場に持ち込んで使い続けたからだと言われている。

当時のAppleコンピュータ(キャノンが総代理店だったと記憶する)のマッキントッシュはフィルム・レコーダ共々百万円以上したが、プレゼンテーションのスライド作成には必須でかなりの需要があったようだ。デジタルデータを手軽にプロジェクタで投影できるようになって、ポジスライドは学会でのプレゼンテーション用としての役目を終えた。紙のマウントのポジスライドはその「スライド」という言葉と共に過去のものとなり、プロジェクタでのスライド送りをギミック化した「スライドショー」に名前を留めている。

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数台出品の内、ポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)を落札した。百万円近くした機器も今となっては無用の長物。オークションサイトでは千円札数枚分の価値しかない。

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同機器を動かすためのマッキントッシュはモトローラ製CPUを搭載しOS 9.xが稼働するPower PCであり、これもヤフオクでは数多く出品されていた。SCSIがCI-5000Sの接続要件なので、外部端子にSCSIが備わっているラップトップのマックを探したところ、PowerBook G3 Wallstreetを見つけた。これも格安で落札した。

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このPowerBookはOS 9.2を搭載しAdobe Photoshop、Illustrator、Microsoft Officeなど有用なソフトウェアがインストールされ、内臓メモリ(RAM)はこの時代の名残でRam Doublerによる仮想メモリで240MBまで拡張してある。

PowerBook G3シリーズ中、Wallstreetは名機として名高い。今のクールなアップル・コンピュータではなく、フラワーパワー全開・マッキントッシュの時代のプロダクトでもある。レインボーカラーのロゴがマッキントッシュであることを誇らしげに示している。

幸いにもCI-5000Sと通信するためのドライバ・ソフトウェアはポラロイド社の閉鎖寸前のサイトから辛うじてダウンロードできた。CI-5000Sに限らず、多くのフィルム・レコーダはOSウィンドウズ機種でも動作するが、ウィンドウズ用のドライバソフト(RasterPlus)はライセンスの関係で有料(おそらく高額)なので、ドライバソフトが無料で手に入るポラロイド社のフィルム・レコーダとマックとの組み合わせが最良の選択であろう。

フィルム・レコーダについてネット上の情報はかなり少なく、その大方はプレゼンテーション用のポジスライド作成に関することで、画像主体のフィルム作成については皆無といってよい。その中で機種は異なるものの(Lasergrahics Personal LFR plus)、PowerMacでの実例を紹介している愛媛の御仁のページ(「アナログにこだわる」)が参考になった。かなり昔の記事らしいが、不躾と思いつつメールで使用環境など問い合わせをしたところ、ご親切に返信していただき有用な情報を得ることができた。

あとは試行錯誤のみ。

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Gabrielle Ray

続きは「サイアノタイプ(フィルム・レコーダ)」項で。

(おわり)

posted by ihagee at 03:10| フィルム レコーダ