2019年06月02日

サイアノタイプ - その77(引き伸ばし機)



昭和11年(1936)製の乾板用のハンザの引き伸ばし機(ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=125, 1:6.3)についての記事の続き。

去年の9月頃の作例(砲弾型LED 100個のUV光源)と比較する為、同じ乾板(1900年頃の5x7インチのネガ乾板)で再度プリントを試みた(用紙はvif Art (B5 H.P. surface) paper)。

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以上、いずれも焼き付け時間:約二時間、ジャスミン茶でトーニング。

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去年9月頃の作例(用紙は同じくvif Art (B5 H.P. surface) paper):

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二番目の作例のみ左右反転(鏡像)でのプリント。なお、いずれも焼き付け時間:五〜六時間程度、ジャスミン茶でトーニング。

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仕上がりが均一で安定しているのは現行のUV光源(SMDユニット)でのプリントということか。プルシャンブルーがトーニングによってさらにブルー・ブラックに変わる。比較して、去年のものは光源の弱さと不安定さゆえ、長時間の露光にもかかわらず不完全な感光に終わり、サイアノらしいプルシャンブルーにならなかった。トーニングで何とか色目を整え、今見返せばそれはそれなりに意図せぬ味わいもある。いかんせん、光源が短寿命だった。もうこの光源に戻ることはないだろう。

安定した仕上がりは銀塩プリントの(ある程度の)代替としては意味があるが、サイアノタイプの本来得意とする表出性に乏しい。

(おわり)

posted by ihagee at 08:54| サイアノタイプ

2019年06月01日

小島葉子さんの思い出



「その楽器はアテーナーが作ったものだったが、吹くときに頬が膨れるのを他の神がはやしたてたせいで拾った者に災いが降りかかるように呪いをかけて地面に投げ捨てたのを、マルシュアースが拾ったのだった。 ("マルシュアース" wikipediaより)」

マルシュアースはその楽器の名手となり、竪琴のアポローンと音楽合戦をする。「マルシュアースが優勢だったが、アポローンが弾き語りを始めた所で勝敗がついた。」

マルシュアースが拾った楽器はオーボエだった。その楽器にかけられていた呪いの通り、マルシュアースは生きながら皮を剥がれ死んだ。

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「あれは休憩時間のことでした。誰かが私の部屋をノックするのです。日本人はとても遠慮深い人たちですから私と妻は驚きました。ドアを開けると立っていたのは首席オーボエ奏者の女性でした。小柄でぽっちゃりした女性だったと記憶しています。彼女は立ったままこうしたのです。そして去って行きました。(ギュンター・ヴァント)」

言葉ではなく、泣きながら吹く仕草をし感謝の気持ちを伝えたその女性、小島葉子さんが昨年の暮れに亡くなられた。神話とは異なり、マルシュアースがアポローンの心をその時思うままにしたのかもしれない。

そのアポローンたる人は抹香臭を嫌い、自邸(Ulmiz)の庭の石灯籠の下に骨のかけらを埋めるよう遺言して去った(2002年)。

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(おわり)


posted by ihagee at 11:00| 音楽