2018年02月14日

9mmフィルムムービー・その3



9mmフィルムムービー・その2(Taro Okamoto, Short cinematography)の続き。

川崎の生田緑地にある川崎市岡本太郎美術館では連写カルディアと共に、9眼のlomography pop9も持ち歩いて試写してみた(Fuji Superia Venus800)。このpop9は所謂トイカメラである。



pop9は連写カルディアと異なり、9個のレンズに同時にシャッターが降りる。連写カルディア同様、タイル状に被写体が並んで写ることになるが、サブフレーム間に時差がない点で異なる。

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(川崎市営バス・藤子・F・不二雄ミュージアム線車内は「しずかちゃん」一色だった)

pop9の使い方は通常はこういうものらしい。しかし、レンズが並んでいるということは互いに視差があるということだから、離れたフレームを並置すればステレオ写真となる。ビューアーを用いずとも多少訓練すれば裸眼でも奥行きのある写真を見ることができる(見方についてはHow to see 3D頁参照)。

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(岡本太郎美術館のシンボルタワー「母の塔」)


岡本かの子と共にこの川崎の地に育った太郎。その地に母の勁さを表すかのごとく聳え立つ「母の塔」は圧巻だった。所詮トイカメラと期待していなかったが、なかなかしっかりと写っている。

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このpop9で撮影した写真は、上述のタイル写真やステレオ写真とは別に、視差のある9つのフレームを組み合わせてアニメーション(gif形式)に仕立てることができる。

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gif作成にはフリーウェアのPicGIF Lite(Mac OS用)を用いた。Apple Storeからダウンロード可能。このアプリケーションはとても使いやすい。上掲の画像をCropMaster3(Mac OS用)で9つのサブフレームに切り出して、1→2→3→4→5→6→7→8→9の順番に並べて再生レートを設定しgifファイルに書き出すだけだ。Google ChromeやSafariなどウェブブラウザーで開けば再生できる。NimsloNishikaといった4眼のアナログステレオカメラ(本来、フィルムメーカーがその昔サービスしていたレンチキュラープリント用途)で試している人は多い。


(Nimsloでの1→2→3→4アニメーション例)


垂直方向にも視差の生じるpop9なら1〜9の順番を1→2→3→6→9→8→7→4(5番目のフレームは使わない)にするとwobble(グラグラ)なアニメーションとなる(Pop9 Mega Wobble)。

以下がその例。

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(太陽の塔・生命の樹のミニチュア模型)


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(岡本太郎美術館の前庭)


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(同美術館に向かう途中の生田緑地の池)


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(同美術館内で数少ない撮影可能対象)


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(同美術館「母の塔」・逆光が差し込む際を狙うと効果的)


遠景はレンズ間の視差が少なくなりステレオ感やwobble(グラグラ)感は低い。近景の奥行きのある被写体で光の陰影を取り入れるとwobble(グラグラ)感が強まる。遠景でも「母の塔」の例のように逆光がレンズの一部に入り込む際なら面白いかもしれない。

(おわり)

posted by ihagee at 19:42| 9mmフィルムムービー

2018年02月12日

浅草十二階・凌雲閣遺構



我が家で購読している東京新聞2月10日朝刊の社会面に "工事現場に「凌雲閣」遺構" (発見)なる記事を見つけた。

Ryounkaku Tower

(大江戸博物館に展示の凌雲閣模型)


"明治から大正期にかけての日本で最も高い建築物で、関東大震災で半壊し解体された「凌雲閣(りょううんかく)」の基礎部分とみられるれんがと、八角形のコンクリートの土台の一部が、東京都台東区浅草二のビル工事現場で掘り起こされた。"

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(中略) 9日に現地で記録、測量をした区教育委員会の文化財調査員によると、同様のれんがは1981(昭和56)年にも近くの建設工事現場で出てきた。当時の記録と対応し、今回も「凌雲閣の可能性が高い」としている。凌雲閣は、1890(明治23)年に建設された十二階建て、高さ52メートルの塔で、「浅草十二階」の愛称で親しまれた。展望台から東京が一望でき、日本初の電動式エレベーターが設置された。1923(大正12)年の関東大震災で半壊し、地上部分は取り壊された。調査員によると、文化財の扱いではなく、れんがの状態もあまりよくないことから、工事はこのまま進められそう。大正ロマンが見られるのも残りわずかなようだ。"(同記事引用)

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凌雲閣(浅草十二階)を模したのが仁丹塔。紳士大判用品のチドリ屋の "仁丹塔の斜め前" CMでも馴染み、私の学生時代まで浅草のランドマークの一つだった。



その元祖凌雲閣の歴史的遺構発見の報に居ても立っても居られず、さっそく現場をこの目で確かめようと2月11日(日)に浅草に出かけた。当然のことながらアナログカメラも持参。Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1にKodak T-MAX 400フィルム(モノクローム24枚撮)を詰め、念のための状況撮影の目的でSONY NEX-3(ExaktaマウントのSchneider-Kreuznach TELE-XENAR 135mm/F3.5搭載)も持参した。

東京新聞記事に工事現場のおおまかな略図が載っており、花やしきの近くらしい。その辺りにフェンスに囲まれた工事現場があった。フェンスの隙間から覗くと何かしら遺構らしきものがある。以下はSONY NEX-3(ExaktaマウントのSchneider-Kreuznach TELE-XENAR 135mm/F3.5搭載)での状況写真(デジタル)。

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フェンス越しに砕けた赤煉瓦が見えて一瞬心がざわめいたが、

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銭湯の浴槽らしきものも見え、東京新聞に掲載されていた遺構写真となんとも感じが違う。「もしかしたら違うかもしれない」と思いつつ周辺を隈なく歩いてみたものの見当たらず納得がいかないまま帰宅した。帰宅後、ネットで調べてみてやはり間違いだと気づいた。私が一人懸命になって撮影していた工事現場は一昨年に閉館した浅草観音温泉の解体現場だった。どうりで私以外一人も見物人がいなかったわけだ。

浅草観音温泉 (2)





現場写真の一つにタイルが写り込んでいたが、

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それは人魚の壁画のある大浴場の洗い場のタイルだった。




浅草観音温泉


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昭和の良き時代の遺構には違いないが、やはり納得がいかないので、翌日、すなわち今日(2月12日)あらためて浅草に赴いた。今度はVoigtländer Superb(1933年製前期型)にKodak T-MAX 400フィルムを詰め、SONY NEX-3(Schneider-Kreuznach TELE-XENAR 135mm/F3.5)を持参した。

ネット民の情報ではその場所はパチンコ&スロットサンシャイン浅草店の裏手、富味屋の向かいにあるとのこと。その通りの場所に件の工事現場があった。以下はSONY NEX-3(ExaktaマウントのSchneider-Kreuznach TELE-XENAR 135mm/F3.5搭載)での状況写真(デジタル)。

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(思ったよりも小さな現場だった)


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(明治時代の赤煉瓦)


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(八角形のコンクリートの土台の角部)


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現場はシートで囲まれていたが、一部シートが外され金網のフェンス越しに中の様子を見ることができる。しかし、フェンスの金網が邪魔して思ったようなアングルでは撮れなかった。また、TELE-XENARは望遠レンズなので全景を写し込むことはできない。ただし、離れた場所から部分を狙って撮るにはやはり望遠レンズは欠かせない。広角レンズも鞄に入れておくべきだったと後悔。 Voigtländer Superbでのフィルム撮影の結果を期待したい。

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私以外に、見物したり写真を撮っている人も多い。誰も「凌雲閣」という都市伝説化したレジェンドを一目見たいと思う気持ちなのだろう。「明治爾来の歴史的遺構なのに残す価値無しなんて判断して良いのか?」とか「コンクリートの台や赤煉瓦は砕いて廃棄するつもりか?」などと台東区の文化財調査(東京新聞の報道に拠れば)に首を傾げる人も多かった。このまま重機で砕くのは何とも切ない。

そうこうしていると、自転車に乗った一人の老人がやってきて私を含む見物人相手にこの現場について説明をしてくれた。「浅草」という小冊子(月刊誌)を発行(または編集)されている御仁(うっかりお名前を伺うのを忘れた)で、凌雲閣の解体(半壊した凌雲閣は軍によって爆破処理された)の様子を現場で見ていたという百歳過ぎで現在もお元気なお年寄りの話(そのお年寄りは「百歳まで自分の歯」の百四運動の提唱者らしい)などを伺うことができた。最近取材されたようだ。

震災で半壊した地上部は1923(大正12)年9月23日に陸軍赤羽工兵隊により爆破解体され、その際に撮られた映像は京都大学研究資源アーカイブにて公開されているが『実写 関東地方大震災』、このお年寄りはこの場面に居合わせたということだ。取材記事が「浅草」に掲載されるかもしれない。


(在りし日の凌雲閣・花やしきとの位置関係がわかる)



金曜日(2月16日)には遺構が壊される予定とのことで、それまでが見学できる期間という。なお、八角形のコンクリートの土台部は道を隔てて向かいのビルの下にも伸びているので、将来そのビルが解体・整地される際にまた遺構が現れる可能性もある。

その御仁から「名刺がわりに」と浅草の最新号(二月号)を戴いた。帰りのバスの中で読んでみたが大変おもしろい。東洋興行会長松倉久幸さんの浅草六区芸能伝 [第2幕] 渥美清の物語は読み応えがあった。川端康成氏揮毫による題字の昭和45年創刊という重みがずっしり詰まっており今流行りのレトロ調タウン誌風とは中身が違う。父の書棚に並んでいた「銀座百点」という冊子と趣が似ている(銀座百点は昭和30年創刊)。

月刊誌「浅草」は年間購読3千円(送料込)。購読したくなった。



浅草観音温泉共々、凌雲閣遺構については追って、フィルム撮影結果を報告したい。

(おわり)

posted by ihagee at 14:13| 日記

2018年02月10日

9mmフィルムムービー・その2(Taro Okamoto, Short cinematography)



富士フィルム社製の連写カルディア ビュ〜ン16にFuji Natura1600(36枚撮)を詰め、川崎の生田緑地にある川崎市岡本太郎美術館と東京青山にある岡本太郎記念館の二箇所で試写を行った。小田急の登戸駅と代々木上原乗り換えの千代田線の表参道駅間の移動なので一筆書きで回ることができる。

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前者は(屋外展示物を除き)ほぼ全展示物が撮影禁止、後者は「どうぞご自由に」いうことだった。いくら館内撮影可能であってもフラッシュは他の人の迷惑ともなるので高感度フィルムを用意したわけである(屋外では中判カメラ用の大きめなNDフィルターをレンズ口に手で被せて撮影した)。しかしこの撮影自由な記念館はどちらかと言えば岡本の晩年の居宅に彼の遺徳を偲ぶ趣きで模型やレプリカが多く、やはり主たる作品は川崎の美術館に集めてある。

現像するとネガフィルムは以下のような状態となっている。

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フィルムスキャンにEPSON GT-X980を用いたが、スキャンソフトの小さなプレビュー画面を凝視しながら微妙なマウスさばきで1コマから8サブフレームを切り出すのは至難とすぐに諦めた。通常の35mmフィルムの1コマをスキャンして得た画像データを別ソフトでサブフレームに切り出すことにした。この用途に特化したソフトとしてはCropMaster3(Mac OS用)がある。Apple Storeから800円程度でダウンロードできるので使ってみた。連写カルディアではサブフレームの寸法は高さ9mm、幅9mm(中央部の4サブフレームは幅7mm)とばらつきがあるので、多少切り落とし部分が生じることを覚悟で切り出しのプロポーションはこのソフトにプリセットされている縦(8.5 x 11)か横(11 x 8.5)とした。

切り出したサブフレームを並べてiMovie上で並べてフレーム間の時間を0.1秒として先ずは動画(MP4)で書き出し、書き出した動画ファイルを元にさらにiMovie上で編集を加えた。半透明にしたカットアウトをわずかに時間差をつけて重ね残像効果を加えることでパラパラとした感じを軽減してみた。

なお、岡本太郎記念館の"太陽の塔 1967―2018―岡本太郎が問いかけたもの―" 企画展にちなみ、父が撮影した1970年開催大阪万博の8mmフィルムからデジタル化した映像も挿入しショートムービーに仕立ててみた。


(Taro Okamoto, Short cinematography)


重ねてある音楽はMorton Feldmanの作品の一部(パブリックドメイン)。

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連写カルディアを試してみて判ったことは、ISO1600の高感度フィルムを使っても決して屋内撮影向きではないということ。そもそもの用途がゴルファーのスイングの解析で晴れの屋外で用いるように設計されているわけだから当然だろう。また連写モードよりも1コマシャッターでこちらが動きながら一コマづつ撮影する方が面白い絵となることも判った(被写体が動くものであれば連写モードが良いだろう)。

しかし、フレームをつなぎ合わせてみると思わぬ展開となり画像の粗さも手伝って、結果として「皆で妥協する調和なんて卑しい(岡本太郎)」は多少表現できたかもしれない。

次は動く被写体を相手に<9mmフィルムムービー>を作成するつもりである。

(おわり)


posted by ihagee at 19:35| 9mmフィルムムービー